#683

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「どれも作品と言えるヒットでした」“MVP獲得”イチローが語るオールスター秘話と「過去6年間とは明らかに違う自分」《インタビュー/2007年》

2025/03/04
メジャー7年目。「過去6年間とは明らかに違う自分」に手応えを感じていた男は、超一流が集うオールスターでも光り輝き、自身初、かつ球宴史上初のランニング本塁打を含む3打数3安打2打点の大活躍でMVPを受賞。しかし、その右足は悲鳴を上げていた。(初出:Number683号 イチロー「7年目のMVP」 NumberPLUS「イチローのすべて」にも掲載)

 イチローは、今年もオールスターゲームの主役だった。

 それは、結果的にMVPを獲得したからということではない。マニー・ラミレス(レッドソックス)は、またもイチローを捕まえて「打つとき、どうしても顔が前に動いちゃうんだけど、どうしたらいいんだ」と、相談を持ちかけてきた。アレックス・ロドリゲス(ヤンキース)はイチローに教えてもらったアップの方法を「今もあれでいいのか」と確認にやって来た。カール・クロフォード(デビルレイズ)やグレイディ・サイズモア(インディアンズ)までもが、イチローのもとへやってきて、あれこれと質問攻めにしていた。

 これは、試合開始前のことだ。ア・リーグのクラブハウスで行われたチーム・ミーティングで、ジム・リーランド監督(タイガース)の話がひとしきり続いたあと、最後に選手たちに「誰か、他に何かないか」と訊ねた。すると、デイビッド・オルティス(レッドソックス)が名乗りを上げた。彼は「話したいことがある」と切り出すと、こう続けた。

「今年もイチローに話をさせろ~ッ」

 最近のア・リーグで恒例になっている、イチローの“檄”。今年も常連メンバーの一人、オルティスがイチローに水を向けた。盛り上がる選手たちの輪の中心に向かって、イチローがのっしのっしと歩いていく。

「ヘイ、みんな、よく聞けよ」

 さすがに役者はこういうときに盛り上げる術をよく知っている。イチローが何をするのか知っている選手たちは笑いを必死で押し殺しながら、また初めての選手たちは何が起こるのかと息をのんでイチローの言葉を待つ。

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photograph by Yukihito Taguchi

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