日米球界を知り尽くす「マジック」の使い手の眼に、今年のワールドシリーズの戦いはどのように映ったのか。明暗を分けることになったのは、両監督の投手起用だった。全5戦のポイントを、皮肉交じりの“ボビー節”で解説。(原題:[プロフェッショナル解説]ボビー・バレンタイン ロバーツ采配の“裏ポケット”。)
「ヤンキースはもう終わっている」
ワールドシリーズ第1戦の延長10回、ドジャースのフレディ・フリーマンが逆転サヨナラ満塁ホームランを放つと、ボビー・バレンタインはそう言い切った。監督経験者にしか分からない勘が働いたのだろう。
名門球団同士の顔合わせは43年ぶり12度目。世界一を決める7試合はどんな接戦になるのだろうかと、全米で大いに盛り上がっていた。劇的な結末を迎えた第1戦は、まさにその期待通りの滑り出しに見えた。
ところが、監督として千葉ロッテ、レンジャーズ、メッツ、レッドソックスの日米4球団で23年間も指揮を執ったバレンタインは、初戦が終わった時点で「ドジャースが強すぎる」と感じていた。今回、バレンタインはワールドシリーズを解説するCBSスポーツの番組に出演しており、この発言は放送前の会議室で発せられた。さすがのバレンタインもシリーズが始まったばかりの番組内で「終わりだ」とは言えなかったようだ。
とはいえ、その鋭い視点は健在だ。今回は本人の監修の下、同番組内での発言をベースに全5戦の解説を構成した。
第1戦
10回にヤンキースが1点を勝ち越し、3-2でドジャースの攻撃は7番捕手ウィル・スミスから始まる。下位打線の3人を抑えればヤンキースが勝利だ。スミスが右飛のあと、四球と内野安打で1アウト一、二塁。1番指名打者の大谷翔平に回ってしまった。当然、投手交代となるが、ヤンキースのアーロン・ブーン監督の起用にバレンタインは驚いた。
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photograph by Yukihito Taguchi / Koji Asakura