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「この2年間は本当に地獄…」パリ行きを「諦めた」堀米雄斗をライバルたちは「待っていた」《パリ五輪最終予選・現地レポート③》

2024/07/24
最終予選で左から表彰台の中央に立った堀米
東京五輪・男子ストリートで金メダルに輝いた堀米雄斗。オリンピックという舞台で世界一になっただけでなく、本場アメリカのストリートシーンでも高く評価されてきた。あれから3年、多くのファンは、彼のパリ五輪出場、そしてメダル獲得を当たり前だと思い込んでいた。だが、その夢は風前の灯火となっていた。最後は大逆転でパリ切符を掴んだが、最終予選ではテレビなどでは伝え切れないドラマが起こっていた。現地で大会を取材したNumber編集部・雨宮圭吾が綴る全3回のドキュメントーー。<NumberPREMIERで #1#2 も公開中>

 6月23日、決勝。

 周りの成績以外にも不安な点はあった。開始前のウォーミングアップではなかなかペースが上がらず、比較的簡単なセクションでもミスが出ていた。このとき、堀米は前日の準決勝で痛めた左膝の状態に苦しんでいた。

 直前までトレーナーのケアを受け、テーピングを施し、痛み止めを飲んだ。それが効いてくるまでに時間がかかっていた。幸いにも準決勝1位の堀米の滑走順は一番最後。他の選手の試技の合間、採点の待ち時間に必死にコースを滑り、痛みが消えてくるとともに少しずつ本来の感覚を取り戻していった。

 ラン1本目は90.26。もはやランへの苦手意識などないような貫禄の滑りを見せた。そして、思わぬ展開があった。ランを得意とする根附が2本ともミスを犯して7位と出遅れ、堀米は優勝すれば代表入り濃厚というシチュエーションが整った。

 ゴールは見えた。あとはもう突っ走るだけ。ここからYUTO SHOWが幕を開けた。

 ベストトリック1本目は、準決勝で手ひどい失敗を犯したノーリーバックサイド180 toフェイキーノーズグラインド。前日とは別のレールに切り替え、少し助走速度を抑えることで、決勝のこの場面でニュートリックを成功させた。

photograph by OIS/IOC
photograph by OIS/IOC

 得点は95.65。この大会で全選手通じて初めての95点超えだった。

ボードを足で空へと大きく弾き飛ばした

 ベストトリック3本目。堀米はさらに加速する。

 一番大きなレールを後ろ向きに回転しながら飛び越え、なおかつボードの後ろ側をレールにかけて着地を決めた。ノーリー270テールブラントスライド。どうだとばかりに吠えた堀米は、ホームランバッターがバットを遠くへ投げ上げるように、ボードを足で空へと大きく弾き飛ばした。

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