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「思考や好みは正反対」長谷部誠&遠藤保仁、“水と油”だった日本代表ダブルボランチの凄み【検証:アジアカップ優勝】

2024/05/28
長きにわたり日本代表の中盤を支えた長谷部と遠藤
延長の末、劇的な優勝を飾ったザックジャパン。だが当初チームは一つになれていなかった。そのチームを融合させ、勝利へといざなったのは、全く正反対の性格の2人だった。(初出:Number794号[ダブルボランチが語る]「“水と油”が導いた、アジアの頂点」)

 世界的に見ても、これほど性格も、プレースタイルも、考え方も異なるダブルボランチは珍しい。

 遠藤保仁、AB型、Jリーグ一筋。

 長谷部誠、O型、海外組の先駆者。

 共通点は極めて少ない。

 たとえば、若手に対するスタンスひとつ取ってもまったく違う。試合前のロッカールームで若手が大騒ぎしたら、長谷部は許さない。

「試合の2日前から集中している選手もいれば、直前のロッカールームでスイッチを入れる選手もいる。もっとまわりをリスペクトしなきゃいけない」

 一方、遠藤はまったく気にしないタイプだ。

「僕は直前まで冗談をいって、ワイワイしているほうが好き。ガンバ大阪でも毎試合音楽がガンガンかかっているので。若手が騒いでもまったく気になりませんね」

 思考や好みは正反対。極端に言えば、水と油だ。

 ところが不思議なことに、いざピッチの上に立つと、抜群の相性の良さを発揮するのである。その絶好の例が、2011年1月、カタールで開催されたアジアカップだった。日本代表が優勝したこの大会を振り返ったとき、ターニングポイントには必ずこの2人が絡んでいる。

“勇気”と“知恵”を与える存在として。

準決勝の韓国戦はPK戦で、決勝のオーストラリア戦は延長後半に李の得点でと、大会を通じギリギリの戦いを続けた末の優勝だった Takuya Sugiyama
準決勝の韓国戦はPK戦で、決勝のオーストラリア戦は延長後半に李の得点でと、大会を通じギリギリの戦いを続けた末の優勝だった Takuya Sugiyama

長谷部のアイディアを、遠藤の経験がサポート。

 アジアカップにおける最初の危機は、いきなり初戦で訪れる。ヨルダン戦のキックオフ直前のロッカールームの雰囲気が、本番とは思えないほどに緊張感がなかったのだ。

 その原因は一部の若手にあった。

 ロッカールームで世間話を始め、ときおり笑い声までもれた。そして、チームは集中力を欠いたままキックオフを迎えてしまう。

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photograph by Kazuhito Yamada/KAZ Photography

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