#990
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『リング』誌編集長が占う井上尚弥の“未来図”「問題は周辺階級にライバルが乏しいこと」<世界はこう見ている>

2024/01/16
団体乱立で形骸化した世界王者の肩書に代わり、最も権威あるランキングを制定する米国の専門誌。同誌のダグ・フィッシャー編集長が井上を語った。(初出:Number990号[世界はこう見ている]リング誌編集長が占う井上の未来図。)

 井上尚弥がパウンド・フォー・パウンド・レベルの才能を持っていると感じたのは、彼にとって2つ目の階級、スーパーフライ級に上げるよりもさらに前のことでした。

テクニック云々以前に、ナチュラルな戦闘能力を持っている。リングに立てば、本能的に何をすればよいかわかっている選手に思えたのです。対戦相手の痛めつけ方を理解していることも大きいですね。相手のダメージを察知し、即座にフィニッシュまで持っていけてしまうのはこのスポーツにおいて極めて魅力的な能力です。

no.4 Naoya Inoue ©Naoki Fukuda
no.4 Naoya Inoue ©Naoki Fukuda

 技術面も階級を上げていく過程で大きく向上し、体重調整が容易になることで身体も強くなった印象です。6戦目でWBC世界ライトフライ級のアドリアン・エルナンデス(メキシコ)、8戦目でWBO世界スーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を倒したのは驚異的でした。

 特にナルバエスに2ラウンドKOで圧勝した2014年は、個人的には井上こそがリング誌の年間最優秀選手(Fighter of the Year)だと感じました。しかし、当時の編集長は、スーパーフライ級の選手を年間最優秀選手にするのはクレイジーだと主張し、「どの階級でも良いものは良いんだ」と主張する私と意見が完全に対立しました。当時は依然として軽量級に対する偏見が強く、リング誌はアメリカの雑誌という事情があり、結局は井上の受賞は見送られた経緯があったんです。ともあれ、今では間違いなくトップ5に入る選手になりました。個人的には1~4位のいずれかに据えられるべきと考えています。

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photograph by Naoki Fukuda/Getty Images

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