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「日本一のために連投は当たり前」松坂大輔の“日本シリーズ初勝利”秘話と、マッサージ中の火事~連載「怪物秘録」第34回~

2023/11/08
アテネ五輪で銅メダルを獲得したのち、チームに戻った松坂はプレーオフを経て、中日との日本シリーズに進出。迎えた6戦目、2勝3敗の後がない状況で先発としてマウンドに上がることに。

 2004年、パ・リーグで22年ぶりに実施されたプレーオフの結果、シーズン2位のライオンズが3位のファイターズ、1位のホークスを破って日本シリーズへと進んだ。プレーオフで中3日を含めて3試合に先発した松坂大輔は、ドラゴンズとの日本シリーズでは第2戦の先発に回った。

◆◆◆

 ドラゴンズとの日本シリーズで覚えているのは抑えたシーンではなく、打たれたシーンです。第2戦、ナゴヤドームで立浪(和義)さんに打たれた逆転3ラン……えっ、あれは逆転じゃなくて同点3ランでしたか? そうか、3点リード(6-3)の7回か。アウトローを狙ったまっすぐがインコース高め、甘いところへ行ってしまったんですよね。

 僕、ホームランを打たれたときの打球ってあまり目で追いかけることがないんですけど、あの立浪さんに打たれたホームランはスタンドに入るまで目で追っていた気がします。甘いボールでしたし、打たれた瞬間に『やられたっ』と思ったんですが、それでもスタンドまでは届かないでほしい、フェンスに当たって跳ね返ってくれと、そんな気持ちで打球を追っていたんだと思います。まだ同点だったのに、今の今まで試合をひっくり返されたと思い込んでいたほどですから、あのホームランにはものすごくショックを受けました。

 確かにシーズン中から腰の状態がよくなくて、それでもあの日は投げていて何とかできそうだな、という感じだったんです。そもそもアウトローのまっすぐは僕にとって難易度の高くないボールだったのに、なぜ投げ切れなかったのか。よりによってあんな甘いところへ投げちゃうなんて……日本シリーズで簡単に勝てない(2002年に2敗)のも『野球の神様がまだ勝たせてくれないのかな』なんて考えていました。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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