“平成の怪物”と呼ばれた剛腕が、ついにマウンドを降りた。あの甲子園の快投から衝撃のデビュー、そして引退を決断するまで。栄光と苦難の道を等しく歩んだ時代の寵児が、その胸中を明かす。
――最後の登板から1週間が経ちましたが、引退したという実感はいかがですか。
「投げた日の夜、いろんな人からたくさんのメッセージを送っていただいたんですけど、それが今も続いているんで、まだ余韻が残っている感じですね。僕の近況を交えながら返信してますから、完全に野球から離れた感じはあまりしていません」
――すべてに返事しているんですか。
「全部、返しました。数ですか? 400と500の間くらいかな。終わってすぐに送ってくれる人、気を遣ってあえて遅らせた人、3日くらいは減りませんでした」
――10月19日のラストマウンド、今、思い浮かぶのはどんな光景でしょう。
「投げているところではないですね。ブルペンで準備しているところ、投げ終わってみんなでマウンドに集まっているところ、グラウンドを一周しているところ……ブルペンではどうやってストライクを投げようかと、それしか考えていませんでした。まっすぐが入らなくて、変化球のほうがまだマシだったんで、(キャッチャーの森)友哉から『どうしますか』って訊かれて、『まっすぐで行こう、ストライクが入らないかもしれないけど』って言いました」
――5球、すべてストレートでした。
「僕にしてみれば、あれ以上はなかったと思います。初球がボールで2球目がストライク。あとの3球はすべてボールになってしまいましたが、1球だけでもストライクを取れたのは、今までやってきたことへのご褒美だったのかな」
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photograph by Yasuyuki Kurose