「凱旋門賞にアーモンドアイもイクイノックスも挑戦しなかった。凱旋門賞は日本馬の目標ではなくなったのか?」
今年、凱旋門賞への日本馬の挑戦は昨年の4頭から1頭となった。レースウイークの共同会見、海外メディアから飛んだ質問に、唯一の日本馬スルーセブンシーズの尾関知人調教師は毅然と答えた。
「どういった馬を連れていけばいいのかを試行錯誤している段階。勝利が遠のいているわけではない」
今回、スルーセブンシーズ陣営が挑戦を決めた根拠は「軽量の牝馬」「ステイゴールド系種牡馬の産駒」という個性だった。GIを何勝もしたり、圧勝したりした馬ではなく、3月の中山牝馬Sで重賞初制覇、宝塚記念でイクイノックス相手に善戦(2着)した馬が日本の代表だった。地元フランスが誇る無敗の3歳馬エースインパクトは別格の強さだったが、約3馬身差の4着に奮闘した。もちろん出走のためのレーティングは必要だが、体調が整い、展開や馬場がかみ合えば、GI未勝利という格にとらわれる必要はないことをスルーセブンシーズは証明してくれた。逆に、日本でGIを何勝していようと、どんな楽勝劇を演じていようと、その実績が凱旋門賞の舞台で絶対的な武器にはならないことも、日本のホースマンは学んでいるということだ。
アメリカ・ブリーダーズカップへの熱視線。
距離が遠ざかった印象を持たれた凱旋門賞とは反対に、急速に距離を縮めているのが、今年11月に日本勢が大挙する米国・サンタアニタのブリーダーズカップ(BC)開催だ。高額な賞金と主催者の手厚いサポート。走りやすいトラック、日本からの輸送が比較的容易な西海岸。デルマー開催だった一昨年(BCの開催地は1年ごとの持ち回り)、矢作芳人厩舎が挙げた歴史的な2勝、特にBCディスタフでマルシュロレーヌの挙げた大金星が呼び水となったのは間違いない。米国馬の層が薄い芝路線だけでなく、米国特有の速い時計が出るダートで結果を出した事実は、多くの日本の関係者を勇気づけた。今年3月のドバイで米国のトップホースを破ってドバイワールドCを制したウシュバテソーロは、BCクラシックに挑む。'96年に藤沢和雄調教師がタイキブリザードで挑んでから27年、'10年エスポワールシチー以来13年ぶりとなる日本調教馬のBCクラシック参戦はかつてない勝算を秘めたものとなる。
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