#1083
巻頭特集

記事を
ブックマークする

「ホースマンは、上か前しか見てない」なぜ凱旋門賞への夢は醒めないのか?<海外レースの選択肢と戦略は広がるも…>

2023/10/27
ルメール騎乗のスルーセブンシーズ(左から5頭目、赤帽)は4着に善戦
重賞1勝のスルーセブンシーズが4着に善戦した今年の凱旋門賞。しかし、日本馬の挑戦が1頭に留まった事実は、ホースマンたちが紡いできた世界挑戦の歴史が転換期にあることを示している。

「凱旋門賞にアーモンドアイもイクイノックスも挑戦しなかった。凱旋門賞は日本馬の目標ではなくなったのか?」

 今年、凱旋門賞への日本馬の挑戦は昨年の4頭から1頭となった。レースウイークの共同会見、海外メディアから飛んだ質問に、唯一の日本馬スルーセブンシーズの尾関知人調教師は毅然と答えた。

「どういった馬を連れていけばいいのかを試行錯誤している段階。勝利が遠のいているわけではない」

 今回、スルーセブンシーズ陣営が挑戦を決めた根拠は「軽量の牝馬」「ステイゴールド系種牡馬の産駒」という個性だった。GIを何勝もしたり、圧勝したりした馬ではなく、3月の中山牝馬Sで重賞初制覇、宝塚記念でイクイノックス相手に善戦(2着)した馬が日本の代表だった。地元フランスが誇る無敗の3歳馬エースインパクトは別格の強さだったが、約3馬身差の4着に奮闘した。もちろん出走のためのレーティングは必要だが、体調が整い、展開や馬場がかみ合えば、GI未勝利という格にとらわれる必要はないことをスルーセブンシーズは証明してくれた。逆に、日本でGIを何勝していようと、どんな楽勝劇を演じていようと、その実績が凱旋門賞の舞台で絶対的な武器にはならないことも、日本のホースマンは学んでいるということだ。

アメリカ・ブリーダーズカップへの熱視線。

 距離が遠ざかった印象を持たれた凱旋門賞とは反対に、急速に距離を縮めているのが、今年11月に日本勢が大挙する米国・サンタアニタのブリーダーズカップ(BC)開催だ。高額な賞金と主催者の手厚いサポート。走りやすいトラック、日本からの輸送が比較的容易な西海岸。デルマー開催だった一昨年(BCの開催地は1年ごとの持ち回り)、矢作芳人厩舎が挙げた歴史的な2勝、特にBCディスタフでマルシュロレーヌの挙げた大金星が呼び水となったのは間違いない。米国馬の層が薄い芝路線だけでなく、米国特有の速い時計が出るダートで結果を出した事実は、多くの日本の関係者を勇気づけた。今年3月のドバイで米国のトップホースを破ってドバイワールドCを制したウシュバテソーロは、BCクラシックに挑む。'96年に藤沢和雄調教師がタイキブリザードで挑んでから27年、'10年エスポワールシチー以来13年ぶりとなる日本調教馬のBCクラシック参戦はかつてない勝算を秘めたものとなる。

会員になると続きをお読みいただけます。
オリジナル動画も見放題、
会員サービスの詳細はこちら
キャンペーン終了まで時間
特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Photostud

0

0

0

前記事 次記事