夢という言葉には2つの解釈がある。ひとつは将来に向けた希望や願望。もうひとつは現実から離れた空想である。地方競馬はダート主体ながら、ダート競馬の本場アメリカへの挑戦とは無縁だった。しかしこの春、ケンタッキーダービーの舞台に立った大井競馬所属のマンダリンヒーローによる挑戦は、夢が夢を呼び、そのプロセスに多くの人がまた夢を見ることとなった。
2010年に厩舎を開業した藤田輝信にとって、海外競馬への挑戦は夢のひとつであった。'13年には韓国での大井・韓国の交流競走に管理馬を送り込み、また、世界各地に自ら足を運んだりもしていた。
'18年に大井競馬が、提携するサンタアニタ競馬場と、米3歳GIサンタアニタダービーへの出走枠を獲得できる「サンタアニタダービーポイント」を設定する。早速、藤田の管理馬のラプラスが2歳重賞ハイセイコー記念を勝つなどして、その権利を得るのに十分なポイントを獲得した。しかし、複数の馬主による共有馬であった同馬は、一部の馬主の同意を得られず、夢は夢のままとなり、藤田は「個人所有の馬なら……」と次のチャンスを待っていた。
馬主の新井浩明にとっては、何もかもが現実味のない夢のようだった。'21年、大井の馬主会である東京都馬主会による、1歳馬のセリ購入補助金の抽選に当たったことが始まり。好機と思った新井だったが、若駒を見る目に自信はない。馬選びを知人に任せた結果、'12年のサンタアニタでのブリーダーズカップジュヴェナイルの勝ち馬シャンハイボビーの牡駒をサマーセールで入手することができた。マンダリンヒーローと名付けられた同馬は、導かれるように藤田厩舎で管理されることとなった。
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