第一線で活躍するアスリートは、敗戦から何を学ぶのか――。ヨーロッパ挑戦13年目、歴戦のストライカーが挙げたのは、プロキャリア初のスタメン起用、晴れの国立の舞台だった。
【Defeated Game】
2006年1月1日 天皇杯 決勝
浦和レッズ 2-1 清水エスパルス
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サムライには下剋上がよく似合う。たとえ最初の序列が低かろうとも、結局はチームの信頼を勝ち取ってしまう。
下から這い上がっていけばいいだけのこと――。日本においても、渡り歩く欧州においても、岡崎慎司はそうやって己の地位を築いてきた。日本代表では歴代3位となる通算50得点を叩き出し、レスター時代には己の魂をチームに吹き込むかのように“世紀の番狂わせ”と呼ばれたプレミア制覇を果たしている。タフに、そしてクレバーに。37歳になった今もその精神が錆びつくことはない。
多くの場数を踏んできた彼が「珠玉の1敗」に選んだのは日本代表の試合でも、12年以上に及ぶ欧州での試合でもない。滝川二高から清水エスパルス入りした2005年シーズン、公式戦初先発となった浦和レッズとの天皇杯決勝('06年元日、東京・国立競技場)であった。
「フォワードにケガ人が続出して、キタジさん(北嶋秀朗)もいるなかで、それまでリーグ戦もカップ戦も先発したことのない自分が選ばれました。準決勝(セレッソ大阪戦)では延長に入って自分が出て流れを変えることができたと思っていたし、1年間かけてコツコツと積み上げてきたので、(ケガ人が続出したのは)偶然ではあるにしても、ちょっと必然的みたいなところを感じていました。みんな“なんだ岡崎かよ”というのはなく、“アイツ今、調子上げているしな”みたいな雰囲気だったことは覚えています」
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