
最後の試合を約1カ月後に控える中、両足を負傷。男は痛み止めを打ってリングに上がることになった。マットでは強敵・内藤哲也相手に観客を熱狂させ、試合後には予想外の“もうひとつの引退試合”を成立させた。そんな稀代のエンターテイナーの最後の日々を本人の証言をまじえて振り返る。
後楽園球場で解散したキャンディーズは、その前年に普通の女の子に戻りたいと叫んだ。時を経て、3人がマイクを置いた場所からほど近い東京ドームで引退した武藤敬司は、普通のおじさんになると誓ってマットから去った。
普通のおじさんって?
元プロレスラーに肩書きが変わった肌ツヤのいい白髭の人は、前のめりに言った。
「理想で言ったらゴルフしたり、散歩したり。でも膝が人工関節で股関節も悪い俺にとってはなかなかしんどいこと。だから引退してもトレーニングやってんだよ。それに俺はワインが好き。体を動かして汗かかねえと、何よりワインがうまくねえんだよ」
目的こそ違えど、朝5時に起きて9時からみっちりトレーニングを積むルーティンは今も変わらない。ラストファイトから2日後にはSNSに超絶重いレッグプレスをこなす動画をアップしてファンを驚かせている。まるで人生はゴールのないマラソンとでも言うように。
最後にして最大の試練――。
39年間のキャリアを誇るマスターもさすがに焦りを覚えていた。1月22日、横浜アリーナに降臨した“悪の化身”グレート・ムタのラストファイトで両足ハムストリングの肉離れを引き起こし、翌日の精密検査で全治6週間と診断されたのだ。
東京ドームでの引退試合は2月21日。日数的に間に合わないと分かると血の気がスーッと引いたという。
「肉離れなんて初めてだよ。膝、股関節の無理がたたってそうなったんだなって理解できた。ただ、(興行の)冠が俺の引退になっている以上、延期なんて絶対できないし、這ってでも出なきゃいけない。そりゃあ何とかするしかねえよなって思ったね」
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