ただ、強ければいいのか。決してそうではない。現代のプロレスラーには、ファンを時に幻惑し、時に籠絡するほどの強烈な発信力が求められる。トップシーンを知る2人が言葉をテーマに語り合った。
――今回は「マイクアピール」と「言葉」の重要性をテーマにお話を伺います。
蝶野 今の選手はうまい。素晴らしいよ、マイクが。俺らの時代なんて話にならない。例えば橋本(真也)選手なんかは、いざ! という場面で出た言葉が、「時は来た!」(注・'90年2月に橋本が蝶野と組みアントニオ猪木&坂口征二組と対戦前に口走った言葉)だもん。あのレベルだよ、俺たちは。あれ、吹いたよね?(注・吹き出したのは当の蝶野) 見てない?
内藤 見てました。小学校低学年とかだったのでハッキリ記憶がないですけど……。でも、どういう意味なんだろう? って(ファンに)考えさせるという意味では「なるほどな」ってなりました(笑)。
蝶野 今の選手はドーム級の会場をちゃんと締められる。俺らの時なんてほとんど締められないよ。天山(広吉)とタッグ王者だったころ、タイトルマッチをやってさ。当時は坂口さんが社長で、俺が適当に吠えた後で天山にマイク渡して「オイ、坂口さんに噛み付け」って言ったんだ。そうしたら「オイ! シャ、シャカグチ!」って。坂口を呼び捨てにできなくて、坂口と社長が混ざっちゃってさ(笑)。
内藤 僕がプロレスを見てた当時は、勢いに任せて何を言ってるかわからないマイクって確かに多くて。何を言ってるかわからないけど観客も「オー!」って盛り上がる。でも僕は「何を言ってるんだろう?」と思ってしまっていた。自分がプロレスラーになったらハッキリ伝わるようにやりたいなと思っていたので、マイクを持つようになってからはゆっくり、伝わるように言おうというのは心がけてますね。
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photograph by Shunsuke Mizukami