卓球の五輪3大会メダリストである石川佳純の引退で、混戦状態にますます拍車がかかっているパリ五輪女子シングルス2枠の代表争い。選考レース14大会中の7戦目となる「全農カップ・トップ32」が5月6、7日に神奈川県平塚市で行なわれ、14歳の中学3年生、張本美和(木下アカデミー)があっと驚く準優勝を飾った。
選考レース対象の国内大会で自己最高の成績。優勝した早田ひな(日本生命)の100ポイントに次ぐ90ポイントを加算し、選考レースにおける順位は大会前の10位から一気に5位までジャンプアップした。
このところの急成長ぶりが結果に表れた。張本は昨年12月に世界ユースU19女子シングルスで準優勝。今年3月にはシニア大会の「WTTスターコンテンダー・ゴア」に出場し、20歳の長崎美柚と組んで出た女子ダブルスで初優勝を飾ったほか、女子シングルスで4強入りを果たしている。身長は166cmまで成長。得意のバックハンドドライブの威力が増しており、伸び盛りの勢いを全農カップにぶつけた。
準々決勝で東京五輪代表の平野美宇を初めて破ると、準決勝では難敵のカットマン、佐藤瞳に逆転勝ち。早田との決勝戦では激しい打ち合いの末に2-4で力負けを喫したが、追い込まれた第6ゲームに女子では珍しい「YGサーブ」と呼ばれる逆横回転の高難度サーブを繰り出すなど、胆力と引き出しの多さをアピールした。5月2日発表の世界ランキングは26位だが、それ以上の力を感じさせている。
選考ポイントの配点が最も高い世界選手権(5月20日開幕、南アフリカ)には出場できないが、このまま選考レース5位以内をキープしていれば高配点のアジア選手権(9月、韓国)に出場できる。
2枚あるパリ五輪女子シングルス切符の1枚目は早田がリードしているが、選考レース2位の平野や7位の伊藤美誠を含めて2枚目は先がまったく読めない状態。男子シングルスのエースである兄の智和とそろってパリ五輪出場を目指す張本は台風の目以上の存在だ。
「自分の中で成長を感じている。1試合1試合諦めずに戦いたい」
強気の14歳の視界にパリの舞台の光景が入ってきた。