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[レジェンドFWが語る]岡崎慎司/柳沢敦「パスに織り込まれた優しさ」

2023/02/15
いったい何人のストライカーが惚れ込んだのだろう。柔らかく上品な織物のようなパスに。なぜ彼にはそれが可能なのか。技術だけでは説明できない何かがそこにはあった――。

 ベルベットパス。

 小野伸二のパスがそう形容されたのはいつのことだったのか? 2001年夏、オランダ・フェイエノールトへ移籍し、同シーズンUEFAカップ優勝を果たしたころには、彼の名とそのパスはヨーロッパでも定着している。

 小野の柔らかでかつ確かなテクニックから生まれる「優しいパス」を体感したストライカーのひとりが柳沢敦だった。

「伸二は多種多様なパスをどんな状況でも出せる。あとはシュートだけという形で出される伸二のパスは、本当に優しいパス」

 2001年7月1日。翌年のワールドカップ日韓大会のために新設された札幌ドームのこけら落としとなるキリンカップ日本代表対パラグアイ代表には3万人を超える観衆が集まっていた。この日の小野は数週間前に準優勝したコンフェデレーションズカップ同様に左アウトサイドに立った。

 16分、左サイド後方でパスを受けた小野は、相手ゴール前へ40mほどの長いパスを送る。

「相手が攻撃的に出てきたので、DFの裏にはスペースがあった。自分とDFのスピードを考えたとき、ロングボール一発でゴールを狙えるなと考えていました。特に伸二とそういう話はしていなかったけれど、きっと伸二もゲームのなかで一瞬で相手を理解し、僕のスピードをわかったうえで、ここだったら通るだろうというパスを出してくれた。背後へのパスは流れてしまうケースもあるけれど、あのとき、伸二は、ボールを逆回転させて、相手のDFとGKの間に落ちるパスを蹴った。僕はワンバウンドしたボールをダイレクトでシュートできました」

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photograph by Naoya Sanuki

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