18歳の頃の小野伸二を知る“ペトロ”は今、オランダ南部の小さな街フフトで暮らしている。ゼリコ・ペトロビッチ。ピッチを縦横無尽に駆け回り、常に闘志溢れるペトロの雄姿を、往年の浦和レッズファンなら脳裏に焼きつけているはずだ。
'98年、清水商業高を卒業して浦和に加入したばかりの小野の印象を、ペトロは鮮明に覚えているという。
「シンジは一目で規格外の選手だと分かった。両足を遜色なく使い、激しいプレスを受けても涼しい顔をしながらボールを操る。私は現役時代、多くのビッグプレーヤーとプレーした。セビージャで一緒だったディエゴ・マラドーナもその一人。そんな私が見てもシンジのテクニックは並外れたものだった。いや私だけでなく、誰もがシンジのとてつもない才能に気付いたはずだ」
やがてペトロは小野が欧州でプレーしたい意向であることを知ると、古巣のPSVに連絡した。「シンジ・オノという若いMFはオランダで絶対に成功するから獲得すべき」と熱心に説いた。
「シンジにはオランダのサッカーがピッタリだと思ったんだ。イタリアやスペインに若い選手が行っても、数試合出来が悪かっただけで干されることもある。その点、オランダには若手を起用しながら育てるというビジョンがある。最初は期待に応えられなくても、徐々に力を発揮すればいい。PSVには何度も連絡したんだけどね……彼らは何のアクションも起こさなかった」
一方、当時フェイエノールトのテクニカル・ダイレクターを務めていたロブ・バーンは、ジェフ市原のオランダ人監督ヤン・フェルシュライエンから「日本にシンジ・オノという良い若手がいる」と聞いた。バーンはペトロや日本にいる知人にコンタクトを取ると、誰に聞いても小野のポジティブな評価しか返ってこなかった。
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