堂安律と三笘薫の投入からわずか6分間。グループステージ最終節のスペイン戦は、まさに電光石火の逆転劇――。
大金星をあげたドイツ戦の再現のような展開に、ハリファ・インターナショナル・スタジアムのスタンドも、記者席も、興奮に包まれた。62分には前線のインテンシティを落とさないように、疲れの見え始めた前田大然に代えて浅野拓磨を送り出す。
だが、それ以上に唸らされたのは、68分の采配である。
スペインがジョルディ・アルバ、アンス・ファティを投入して日本の右サイドからの攻勢を強めようとすると、森保一監督はすかさず冨安健洋を右ウイングバックに送り込み、相手の反撃の芽を摘み取ってしまったのだ。
「リードしたらトミの力を借りて試合を締めようということは考えていました。起用については悩みました。3人のセンターバックがイエローカードをもらっていたので、どこまで我慢すべきかと。退場者が出るかもしれないなかでの決断だったので難しかった。交代を決断したのは、スペインが左サイドの攻撃を強めるカードを切ろうとしていたからです。守備をしっかり固めて相手の攻撃を受け止め、ボールを奪って攻撃に転じたいと」
この選手交代に、指揮官の強みが詰まっていた。
最善の準備と冷静な判断、そして決断力である。
11月23日のW杯初戦。日本は開始直後からほぼ一方的にドイツの攻撃を浴び続けた。先制点を許しながらもなんとかハーフタイムにたどり着くと、指揮官が動く。冨安を加えて布陣を3-4-2-1に変更し、ドイツに対してフルコートのマンツーマンディフェンスを敢行するという大胆で強気な策に出たのだ。
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