イチローが「価値観を共有できる選手」として真っ先にあげた唯一の存在。それが松坂大輔である。怪物と呼ばれてきた男は、並ぶ者なき孤高の天才をどんな想いで見ているのか。二人にしかわからない18.44mの対話や引退後の野球への向き合い方まで、真摯に余すところなく明かした。
――松坂さんにとってのイチローさんってどんな存在なんですか。
「どんな姿を見ていても嬉しいし、楽しい。常に見ていてワクワク、ドキドキする存在です。この前、球場で会ったときも、フェンスにかけられたシートが透けた向こうにキャッチボールをするイチローさんのシルエットが見えたんです。それだけで、『あっ、イチローさんがいる』ってドキドキしちゃう……そんな人、他にいません」
――なんだか恋人みたいですね。
「僕のイチローさんに対する想いはそれに近いものがあると思います」
――でも、宿敵だったんですよね。
「そうなんですけど(笑)、でも投げながら会話のできる人でした。イチローさんと対戦を重ねるたびに過去のことを考えさせられたり、未来のことまで想像させられる。僕がプロに入る前からイチローさんに対して抱いてきた想いがあるからこそ、マウンドとバッターボックスの間で会話ができていたんだと、僕は勝手にそう思っています」
――イチローというバッターが技術的にすごいのはどういうところだったんですか。
「イチローさんは、漫画の世界のバッターなんです。対峙したとき、どこに投げようかと考えますけど、どんなコースのどの球に対しても、すべてバットが出てくるイメージしか湧いてこない。このコースはこういう形で打たれそう、このボールはこうバットを出されそう、いったいどこへ投げたらいいんだ……これ、楽しいなぁって(笑)」
――そこで、楽しいなぁ、になるんですか。
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photograph by Takuya Sugiyama