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[ロックアウト明けの春を読む]異例のシーズンの“カオス”な幕開け

2022/04/02
続出する故障者、新ルール、補強戦略の見直し、そして薬物――。ロックアウトの余波に揺れるイレギュラーな球春を展望する。

 99日間のロックアウト。解除後の補強大合戦。わずか3週間のスプリングトレーニング期間。その間に戦力整備を進めて40人枠、26人枠を決め、開幕を迎える。編成はもちろん、戦うことに関して、あらゆることが緊急案件だ。このカオスの春はシーズンに影響を及ぼすことはないのか。

 答えはもちろん「ノー」だ。

「毎年、選手の出入りが激しく、特に序盤は故障者も出やすい。だから、チームをしっかり掌握するのに毎年2カ月かかる」

 こう語ったのは、かつてブレーブスを14季連続地区シリーズ優勝に導いた殿堂入り監督のボビー・コックスだ。

 この名将でさえチーム作りに一定の時間を要したのだから、様々な局面で影響が出てくることは十分に想像できる。今季の新監督はバック・ショーウォルター(メッツ)ら4人。どれだけ準備ができたのだろうか。

 しかし、監督の力量では及ばないことも起こり得る。1994年から'95年にかけての232日間に及ぶ泥沼スト。球団初優勝に向けて快進撃を続けていたエクスポズはシーズン中止に夢を絶たれただけでなく、翌年、資金難に追い込まれ主力選手を次々に放出し、一気に最下位に転落。それが引き金になってワシントンDCへの移転というチームの運命そのものまで変えてしまったこともあったのだ。

 今回の労働争議における災難はパドレスに降りかかってきた。今やチームの顔、主砲フェルナンド・タティスJr.のバイク事故による左手首骨折。全治3カ月、最悪の場合は前半戦絶望という。昨年12月、故郷ドミニカ共和国での事故だった。通常なら球団が報告を受けて対応するところだが、すでにロックアウト中。球団と40人枠選手との接触は禁止されていた。球団は第三者を通じて事故の事実を伝え聞いていたというが何もできない。タティスも結果的には満足な治療を受けずに練習を始め、悪化させてキャンプ地入りした。「ロックアウトでなければ状態は全く違っていたはずだ」と、球団関係者は嘆く。

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photograph by Getty Images

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