2002年10月27日、カリフォルニア州アナハイム。歓喜と興奮に包まれたエンゼルスの本拠地エジソン・フィールドには、打ち上げ花火の轟音が響き、無数の紅白テープが舞っていた。第7戦までもつれ込んだワールドシリーズでジャイアンツとの激闘を制したエンゼルスが、球団創設42年目で初めて世界一の座に就いた瞬間だった。
幾重にも重なり合った輪の中では、いつもは冷静沈着なマイク・ソーシア監督が、珍しく頬を紅潮させ、少し甲高い声をさらに上ずらせていた。
「本当にすごいチームだ。本当にすごいことをやり遂げてくれた」
長年、ヘブン(天国)に届かないあまりに、エンゼルス(天使)ではなく、デーモン(悪魔)と揶揄され続けた弱小球団が、ついにチャンピオンとなって天国への階段を登った。
あれから20年。大谷翔平をはじめ、マイク・トラウト、アンソニー・レンドンら球界を代表するスター選手を抱えながらも、エンゼルスは'14年にア・リーグ地区シリーズでロイヤルズに敗れて以来、ポストシーズンから遠ざかり、低迷を続けている。才能豊かな選手を持ち、名将ジョー・マドン監督が率いながら、なぜ優勝争いにすら食い込めないのか――。
前年の'01年、75勝87敗と勝率5割に届かなかったエンゼルスは、メジャー最多タイ記録の年間116勝を挙げたマリナーズに41ゲーム差を付けられる屈辱のシーズンを送った。チーム再生へのメドすら立たない中、オフには、「不良債権」となっていた主砲モー・ボーンを交換トレードでメッツに放出し、ベテランの先発右腕ケビン・エイピアーを獲得した。それでも、大型補強を進めるだけの資金力はなく、スーパースターも不在とあって、'02年も同地区のライバルであるマリナーズやアスレチックスとの実力差は歴然と見られていた。
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