2021年の大谷翔平はピッチャーとして23試合に先発し、130イニングと3分の1を投げた。バッターとしては146試合でスターティングラインアップにその名を連ね、537打席に立った。その結果としての9勝と46本のホームランは、大谷の「今年はラストチャンスかなという感じだった」という二刀流への危機感からもたらされたものだった。栗山英樹は、今年の大谷の追い詰められたメンタリティを想像の範疇だった、と言った。
「翔平の危機感は理解できるよ。チームとしてはできるだけ休ませずにいこうと決めていて、試合に出る、出ないは翔平が自分で決めていたと思う。もともと投げた次の日はすぐにバッターで行けると前から言っていたし、投げる前の日は準備が必要だったのに身体ができあがって行けるようになったんだろうね。ならば二つやることに対する周りの危惧を払拭するために、みんながビックリするような成績を残さなくちゃいけない。そのためには、それなりの出方をしなくちゃいけない。去年みたいな成績じゃ、二刀流をやめさせようとなってもおかしくないし、翔平がそういう周りの空気を読んで、これは思う以上に二刀流はヤバいと思ったんじゃないかな。だからこそ今年の結果があったんだと思う。翔平は宿題が難しければ難しいほど結果が出る。これはヤバいなと空気を察知したときのほうが翔平らしさが出るんだよね」
栗山の頭に浮かんだのは2016年5月29日の仙台でのイーグルス戦――DHを使える試合であえてピッチャーとして先発する大谷を打順に組み込む、いわゆる“リアル二刀流”を、パのチームとの試合で初めて断行した日のことだった。
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