金メダリストの姉の背中を追って、妹も代表権を獲得。2人でのメダル獲得を切望する姉に安心して戦ってもらうためにも、先陣を切る友香子は負けられない。
2004年アテネ五輪で採用されてから金メダルを量産、「新お家芸」とも称される女子レスリング。今大会も全階級に実力者がそろったが、最も頂点に近いのが川井梨紗子だ。リオデジャネイロ五輪金メダリストであり、その後に行われた3度の世界選手権すべてで優勝している。
63kg(現62kg)級で出場したリオに対し今回は57kg(旧59kg)級と、階級を1つ下げた。62kg級の妹友香子とともに大舞台へ、そして金メダルを、という夢のためだ。もともと、リオの前は59kg級であったこともあり、一緒に出場するには妹が62kg級で代表を目指し、自分は階級を落とすのがベストと考えた結果だ。
とはいえ、それは容易ならざる選択だった。その階級には復帰した伊調馨がいて、代表争いが熾烈なものになるのは想像がついたからだ。事実、'19年世界選手権代表を決めるプレーオフは3-3の同点、規定による勝利と薄氷を踏んだ。ここで敗れていれば東京への道は断たれていただろう。それでも妹と2人でという思いが強大な壁に向かう覚悟を生み、代表を手繰り寄せた。
妹思いであるのは次のエピソードにもうかがえる。'17年世界選手権63kg級の代表決定戦は、当初友香子を除いた2名で行われる予定だった。1階級下で世界選手権出場が既に決まっていた梨紗子は「妹にもチャンスを」と当時の強化本部長に直々に訴えて妹の決定戦への参加を認めさせ、妹が勝ち抜いて代表になった経緯がある。
特製トートバッグ付き!
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています
photograph by AFLO