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新時代メンタルコーチの教え/星稜高校 「大逆転を引き寄せた“必笑”の仕掛人」

2020/07/27
'19年夏、好投の奥川(現ヤクルト)を笑顔で迎える林監督(左)。『必笑』は'14年以降も継承された。

 2014年7月27日。夏の高校野球・石川大会決勝戦で星稜が9回裏に8点差をひっくり返し、小松大谷をサヨナラで破った一戦は、今なお「奇跡の大逆転」として語り継がれている。

 その奇跡は、星稜に「起きた」ものではなく、星稜が「起こした」ものだった。

 小松大谷戦の1年前。監督の林和成に訪れた僥倖から、物語は始まる。

「'11年に監督となってから、選手たちが萎縮して、プレッシャーに負けて落とす試合を多く見てきました。'13年に飯山さんと出会えたのは、運命的だと思いました」

 メンタル指導の専門家として、ビジネスシーンで実績を積む飯山晄朗(じろう)を、林の高校時代の恩師で元野球部部長の本田実から紹介された。林は本音をぶつけた。

「能力がある選手はいるんですが、勝てないんです。どうやってメンタルを鍛えていけばいいでしょうか?」

 飯山が切実な問いを受け止め、言った。

「ベンチで監督がどういう表情でいるのか。選手にどう声をかけるのかが重要です」

監督の表情が硬いことが気になった。

 林とのやり取りを、飯山が振り返る。

「とても真面目で、情熱もある監督だと感じました。でも、表情が硬かった。選手は監督を見て行動します。だから、『監督がもっと余裕を持って選手たちと接すれば、チームは変わります』と話しました」

 飯山が正式にメンタルコーチとなった'13年、星稜は6年ぶりに夏の甲子園出場を決めた。林は成果について「私自身が飯山さんのお話を生かせたと思います」と頷く。

 林に促したように、飯山のメンタルコーチングの大原則は、相手を「前向きにさせる」ことだ。その第一歩として、チームに「言い切る」「やり切る」を浸透させた。

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photograph by Hideki Sugiyama

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