湿度が高くなるちょうどこの時期、芝生の香りが濃く広がり、夏芝が青々としてくる。真夏の炎天下、冬の凍り付くような寒さでの作業。本作からはその匂いも、温度も伝わってくる。小説ではあるが、本書では阪神園芸のプロの技が忠実に描かれている。例えば冬に行われる“天地返し”は1年のグラウンド状況を決める大事な作業。硬くなった土を掘り起こし、雨のタイミングをみてじっくり固めていく。阪神園芸の金沢健児施設部長が「俺が書いた本より詳しく載ってるわ!」と笑うほどの描写。精魂込めて手入れされていく土を通して、様々な人生をリアルに描きだしている。
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