#991
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<最強コーチが語る可能性> チーム・ブライアン「独創的で芸術的な4回転アクセルを」

左がブライアン・オーサー、右がジスラン・ブリアン。
五輪2連覇の偉業を達成した羽生が新たな目標として掲げたのは、叶わぬ夢とも言われた4回転アクセルだった。前人未踏のジャンプは果たして成功するのか。王者を支えるコーチたちが語った。(Number991号掲載)

 人類初の4回転アクセル。それは男子が4回転時代を迎えた1980年代から“叶わぬ夢”とされてきた最後の砦。そこに今、最も近づいているのが羽生結弦だ。ブライアン・オーサー率いるチーム・ブライアンは、いかにその難敵に近づこうとしているのか。オーサーは語る。

「もし世界初の4回転アクセルが実現するとすれば、その選手がユヅルであることは間違いないでしょう。すでに、4回転アクセルへの準備といえる技術は身についています。ユヅルの身体感覚をどこまでサポートできるか、そしていかにケガなくシーズンを過ごさせるかが私達の役割です」

 そもそもアクセルジャンプとは何なのか。オーサーはトリプルアクセルを武器にした最初の選手で、五輪で2度銀メダルを獲得した。アクセルについてこう考える。

「当時はジャンプ理論が確立されていない時代で、自分の感覚から後付けで理論を作りました。アクセルは前方に向かって左脚で踏み切り、振り上げた右脚に空中で体重を移動させて回転を始めます。当時はディレイでの回転、そして回り切ってから降りるのが当たり前でした」

 これはどういうことかというと、ジャンプを跳びあがってから空中できっちり3回転半まわり切ることを意味する。当時は6.0点満点制で、ジャンプの本数ではなく、全体的な印象で得点が決まる。そのためトリプルアクセルも、飛距離や流れがあり、プログラムに溶け込むことが大前提だった。

ジャンプは回転数だけではない。

 ところが現在は、ジャンプ1本ごとに基礎点を積み増せる。まずは回転数が認定されることが最優先となり、「ギリギリの回転で」「転ばずに降りる」技術が研究された。例えば、空中に跳びあがる前に氷上で回転を始める跳び方や、スピードを出さずに真上に跳び上がることで回転軸をブレにくくする跳び方などだ。プラス点はつきにくいが、一応の成功にはなる。それにオーサーは警鐘を鳴らしてきた。

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photograph by Asami Enomoto

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