いかにも、黒田博樹らしい言葉だった。8月14日のレンジャーズ戦。6回まで無安打の好投を続け、メジャー屈指の強力打線相手に、わずか2安打で完封勝利。中盤は地元ヤンキースタジアム全体が大記録への期待感で緊迫し始めていたが、黒田は偉業を逃しても、柔らかい笑顔でサラリと言った。
「ノーヒットノーランをして10勝プラスしてくれるんだったら必死に狙いますけど、同じ1勝なんでね。それよりも0点に抑えてチームが勝たないと意味がないですから」
強力打線が揃うア・リーグ東地区で防御率3点台前半をキープすることは、決して簡単ではない。その一方で、広島、ドジャース時代から不思議と打線とのかみ合いが悪く、勝ち星には恵まれていなかった。ヤンキースに移籍しても、その傾向は変わらず、4日のマリナーズ戦では7回途中まで1失点と踏ん張っても敗戦投手となるなど、好投が報われない試合は多い。それでも、ジラルディ監督の信頼は変わらず、11勝目を挙げた試合後には、あらためて高い評価を口にした。
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photograph by Yukihito Taguchi