天才ぶりを見せた幼少期から、「生意気だ」と言われる奔放な
言動まで、タイガーと酷似する若き王者の実像に迫った。
テニス界の女王カロライン・ウォズニアッキとの熱愛報道が世界を駆け抜けたのは今夏だった。プロデビューから4年間、ずっと世話になってきたマネジメント会社に電話1本で別れを告げ、別のマネジメント会社に電撃移籍したと一斉に報じられたのは今秋だった。ゴルフそのものではない私生活や周辺の出来事までもが新聞・雑誌のヘッドラインを飾る現象は、月並みな表現をすれば、スターの宿命。その宿命をこの十余年、ゴルフ界で背負ってきたのはタイガー・ウッズだった。そして今、スターの定めを新たに背負い始めたのが、北アイルランド出身の22歳、ローリー・マキロイだ。メディアのターゲットにされることは喜ばしいのか、嘆かわしいのか。その答えはさておき、注目を一手に集めることは、良くも悪くも、今をときめいている証ではある。
栄枯盛衰と時代の推移を感じさせた全米プロ2日目の早朝。
あれは今季最後のメジャー、全米プロの2日目の早朝だった。練習場には日の出前から50名超のメディアがマキロイの登場を待ち構えていた。初日に木の根が這う地面からショットし、右手首を痛めてしまったマキロイが、2日目以降もプレーを続行できるのか。はたまた棄権を余儀なくされるのか。「明日の朝、球を打ってから決める」。前日の夜、そう発表されたため、翌朝の練習場には世界中のメディアが殺到した。
待つこと1時間以上。大会スタッフの「来るぞ!」の一声で練習場に緊張が走った。「メディアはこの線から後ろへ下がれ」と声を張り上げる係員。マキロイが登場した途端、記者陣は一度は下がったはずの線を一斉に越えて踏み出した。鳴り響くカメラのシャッター音。喧噪を映像に収める5台のTVカメラ……。その緊迫感は、かつてはタイガーを待ち受け、捉えるときのものだった。だが今はマキロイのための緊迫感に変わっている。栄枯盛衰の現実と時代の推移を強く実感させられた朝だった。
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