「勝利投手」ほど、野球界で過大評価されている記録は他にない、と言っていい。年間で何勝したか、通算で何勝したか。しばしば、それが投手評価の最重要事として扱われる。
投手の勝利数は、ファンにとっては興味深い記録だが、投手の価値――チームへの貢献度を計るバロメーターとしては、あくまで目安に過ぎない。勝利数を第一に考えると、9回1失点の負け投手より、5回3失点の勝ち投手の方が優れた投球ということになってしまう。さらには「勝利投手」という記録自体が、守備陣の貢献に言及していない。実際には、「勝利投手」は該当者なしで、むしろ「勝利捕手」を記録した方がいいのでは、という試合もある。だから、勝利数こそ投手の勲章といった考え方は、控えたいと思う。
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photograph by Tamon Matsuzono