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「成功しても、トップは目指せない」宮原知子は“ミス・パーフェクト”からの脱却を目指して、攻めた<世界選手権/2019年>
2024/03/21
オリンピックを経た今シーズン、宮原が求めたのは彼女の異名「ミスパーフェクト」からの脱却だった。なぜ完璧な演技を求めないのか。挑戦の真意を探る―。(初出:Number PLUS FIGURE SKATING TRACE OF STARS 2018-2019 宮原知子 “パーフェクト”の向こう側。)
宮原の胸に深く刻まれているのは平昌五輪の“パーフェクト”な演技だ。すべてのジャンプを降り、思わずガッツポーズをして「ここまでやったならメダルが欲しい」とさえ思った。しかし4位と、わずかに届かなかった。
何が足りなかったのか。北京五輪に向けた新たな4年間は、それがテーマとなった。
「私のジャンプは低いので、回転不足をとられがちだし、加点がつきにくい」
実際に五輪では、メダリスト達のジャンプは各ジャッジによる加点が「+2~3」、宮原は「+0~2」。一見パーフェクトに見えるが、GOEの加点だけで4~6点の差があった。これは3回転ジャンプ1本分の基礎点と同等で、つまり跳んだジャンプが1本少なかったのと同じ。ジャンプの跳び方を変えないと、メダルは無いことを意味した。
「今の跳び方なら成功できるけど、変えないとトップは目指せない」
「今年は今までとは違うんです」。
オフの間は海外のコーチにも習ってジャンプ改造に取り組んだ。助走のスピードを上げ、思いきり跳び上がり、飛距離を出す。軽やかにタイミングで跳ぶタイプの宮原にとっては、ジャンプがまとまらなくなった。シーズン中はアップダウンが続き、GPファイナルは6位。5連覇をかけた全日本選手権は3位で、連勝記録は止まった。しかし諦めなかった。
「今年は今までとは違うんです。前は、大きく跳ぼうと思っていても本番で、『あっ怖い』と思って、無難に跳んでました。今年は思い切り跳ぶ。この気持ちを大切に頑張ります」
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photograph by Naoyoshi Sueishi