#766
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<日ハムスカウトが明かすドラフト当日まで> 斎藤佑樹 「“夢”への入り口」

2010/11/16
  日本中が熱狂した夏の甲子園、そして50年ぶりに行なわれた慶大との
優勝決定戦――。常に周囲の脚光を浴び、結果を残し続けてきたあの男が
今、新たなステージへと進もうとしている。
  稀代のスターへの指名はどのように決められたのか。担当スカウトが
獲得決意までの日々を余すところ無く語った。

 元気ないですね――。

 北海道日本ハムのGMで、ドラフト指名選手の最終的な決定権を持つ山田正雄は、ドラフト会議が終了し、控え室に戻るなり、スカウトのひとりにそう声をかけられたという。今ドラフトの最注目選手、早稲田大の斎藤佑樹を4球団で競合した末に抽選で引き当てた直後だというのに、だ。

「周りの人は、わーわー喜んでいましたけど、これは大変なことになったな……と」

 無論、喜びを爆発させたい思いもあった。だが、これからのことを考えると、表情は緩むどころか逆に強ばっていた。

 ――その数日前。

 山田は、珍しく揺れていた。山田がGMに就任したのは2007年オフのことだ。以降のドラフトにおいては、'08年には学生ナンバー1捕手、東洋大の大野奨太を、'09年にはメジャー球団をも巻き込んでの騒ぎになった花巻東高の豪腕、菊池雄星をいのいちばんにリストアップ。菊池は6球団が競合した結果、交渉権を得ることはできなかったが、その方向性はかなり早い時期に定まっていた。

 だが今年は本番直前まで、5人の大学生投手の中の誰かということしか決まっていなかった。

 いわゆる「ビッグ3」と目されていた早大の斎藤佑樹、大石達也、そして中央大の澤村拓一。加えて、今年になって株が急上昇した2人の左腕、佛教大の大野雄大、八戸大の塩見貴洋。「大豊作」と言われた今ドラフトを象徴する5名だ。しかし、どの選手も決め手を欠いていた。

ブルペンで斎藤を見た10分が方針の大転換を生んだ。

ドラフト会議から1週間後の11月4日。早大構内での記者会見には47社、総勢130名の報道陣が集まった

「選手の評価を数値化したものでは、大石と塩見が高かった。だから何人かの人には『大石で行くことになると思う』とは話していた」

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photograph by Tomoki Momozono

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