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北島康介、五輪へ向けついに始動!!
世界水泳「金と0.22秒差」の舞台裏。 

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川上康介

川上康介Kosuke Kawakami

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posted2011/08/01 11:50

北島康介、五輪へ向けついに始動!!世界水泳「金と0.22秒差」の舞台裏。<Number Web> photograph by AFLO

「悔しいけど悔いはない。最後は久々に頭ん中、真っ白になった。やられたけど、こういうの必要」。レース後に発せられた“北島節”も貫禄十分だった

「折れない心を作る7つの約束」とは?

 その理由は、発売されたばかりの自著『前に進むチカラ 折れない心を作る7つの約束』に書かれていた。

 この本は、「現実を前に立ち止まっている人」に向けて、彼が自身のこれまでの経験、とりわけ北京以降の苦悩、葛藤を通して見いだした「前向きに進むための7つの約束」について書かれた本だ。

“絶対王者”のイメージが強い北島康介の意外な悩み、弱さを明らかにするとともに、それらを克服する過程、セルフケアの方法について丁寧に説明されている。この本を読んでいくと、今回北島が復活するまでにどのような思考を辿ったのか、おぼろげながらその輪郭が浮かび上がってくる。

 北島は今回、恐らく「7つの約束」のうち、以下の2つの“約束”によって、心を再び奮い立たせたのではないだろうか。

「7つの約束」のひとつ……「体の声、心の声に耳を傾ける」。

 北島の強い泳ぎを支えているのは精神力だ。どんなに緊張を強いられるレースでも心を揺るがさず、自分のレースに持ち込める。それがこれまでの彼の勝ちパターンだった。

 しかし100mでは、まったく同じことをダーレオーエンにやられてしまった。ダーレオーエンの強い泳ぎに心を乱された北島は、自分の泳ぎを見失い、予選や準決勝よりタイムを落として4位に沈んだ。並みの選手なら、このまま大会を終えてしまうところだ。

 しかし北島は違った。

「負けた瞬間は本当に悔しいが、すぐに頭を切り替えて『次に勝つにはどうすればいいか』を考え、自分が勝つためのシミュレーションをする。(中略)失敗や敗北もポジティブに考えれば、ライバルを知り、自分を客観視するチャンスだ」(『前に進むチカラ』より・以下同)

 1年間のブランクを経て競技に復帰した北島にとって、今回の世界水泳は復帰後初めての“ガチ”な世界大会だった。

 この2年間「自分との戦い」を続けてきた彼にとって、ダーレオーエンのような強いライバルの出現は久しぶりのことだった。しかしその敗北から彼は多くのことを学んだ。

 心の声、体の声を聞くことで、自分の弱点を徹底的に究明し、200mのレースに備えたのであろう。

 そして……

【次ページ】 「それでも一人では戦えない」という大事な約束。

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