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お花見シーズン直前ボタリング。
ブームの「墓マイラー」をやってみた。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2011/02/26 08:00
ここぞソメイヨシノの故郷。
染井霊園は、ご想像の通り、それほど広くはない。
でも、ちんまりとして、味わい深い墓地ではあるね。何がいいって、墓地内に小さな高低差があって、霊園自体が立体的に見えるのがいい。
箱庭のような霊園なのだ。その背景(借景?)として、巣鴨のフレンドリーな中低層ビル群。これが染井霊園の魅力だ。
で、もうひとつの魅力が、やはりソメイヨシノの並木だろう。
江戸期、ここが駒込染井村と言った頃、ここに突然変異というべきか、葉の出る前に花だけが満開になる見事な桜が生まれたという。
その桜は、有名な吉野(もちろん奈良の吉野です)の桜もかくや、という意味から「染井吉野」と命名された。それを、この地に住む、植木職人や大工などが挿し木をし、増やし、全国に広めたのが、現在のソメイヨシノだ。
ソメイヨシノは種を付けない。よって、挿し木で増やすしかないのだ。だから、全国の公園に植えられているすべての桜は、(ソメイヨシノという名を持つ以上)ここの桜の子供……、というより、この地に生まれた桜のクローンなのである。
桜の樹の下には屍体が埋まっていると言ったのは梶井基次郎。でも、本当に埋まっているのが染井霊園なのだ。
二葉亭四迷も眠る。
大きな自然石に「長谷川辰之助」と刻まれた立派な墓があって、それが言文一致運動で有名な、二葉亭四迷の墓である。
文学嫌いの父から「お前のようなバカ息子は“くたばってしめえ”!」と罵られたのがペンネームの由来、というのは有名な話。実際にここでくたばっているのだが(←篠山不謹慎2)名前だけは本名に戻している。
【染井霊園に葬られたおもな著名人】
▼岡倉天心▼幣原喜重郎▼司馬江漢▼高村光雲・光太郎・智恵子▼二葉亭四迷▼水原秋桜子▼宮武外骨▼若槻礼次郎▼ほか(また、周辺寺院には芥川龍之介や谷崎潤一郎、千葉周作などの墓もあり、広い意味での染井霊園の墓として紹介されることもある)