野球クロスロードBACK NUMBER
楽天で過酷なポジション争いが勃発!
星野監督が目論む最強外野陣とは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/02/28 10:30
野村・楽天に移籍後、外野の守備技術において急成長した鉄平。当初は中堅手だったが、昨季に右翼手へとコンバートされたばかりだったが……
反復練習により体で覚えるきめ細かいプレーの感覚。
当たり前のプレーを体に染み込ませるためには、妥協は一切させない。
それを痛感したのが、2月18日の紅白戦だった。
2回の無死一、三塁の場面でライトへフライが上がる。ホームで刺せると判断した横川史学は、カットに入ったセカンドの内村賢介へ素早く送球する。
走者には生還されたものの、特に目立ったミスはなかった。しかし、ゲームは一時中断される。横川はノックを受けながらそのプレーを数回、繰り返した。
どこかに不備があったのか? 本人にそれを尋ねると、こう説明してくれた。
「ホームで刺せるタイミングであれば、わざわざ内村に投げなくてもいい、と。セカンドベースにショートの松井さんが入っていたので、一塁ランナーを進ませないためのカットプレーも含めての確認作業ですね」
細かいところにも目を配れ。それが真意だ。
決してミスではないことは横川も知っているが、このプレーでより集中力が増したのも事実だ。7回、伊志嶺忠のライン際へスライドしていく難しいライナーをスライディングキャッチ。これには本人も、「一歩目のスタートが早く切れた」と笑顔を見せた。
彼の言葉を本西に伝えると、ニヤリと微笑み、こう答えた。
「自分でそう言えることはとても大事なこと。実際、あれはよく取りましたよ。ナイスプレーです。実戦でああいうプレーができれば自信がつきますし、そのうち、もっとスムーズに捕球できるようになりますよ」
星野監督の狙い通り!? 激化するレギュラー争い。
当の横川は、「勝負していかないといけません」と気を引き締める。というのも、今のところライトの最有力候補は牧田だからだ。しかし、牧田は今、右肩に違和感を訴え別メニューで調整している。だからこそ、牧田不在の間に結果を残し、首脳陣の構想をいい意味で裏切らなければならない。
「僕は鉄平さんのような器用さもなければ、牧田さんみたいな肩の強さもないし、聖澤ほど守備範囲の広さもありません。今の自分にできることは、アウトにできる打球は確実にアウトにする。捕球してからスローイングまでの動作をより早くしてランナーを進塁させないとか、本当に当たり前のことなんです。レギュラーが確約されているわけではないんで、現状に満足せずにやっていきたいです」
当たり前のプレーを意識、徹底している楽天外野陣は間違いなく底上げされてきている。しかし、「手応えというものは、実戦が多くなるこれからのプレーを見て判断するもの」と、本西の目は冷静だ。
ただ、冷静でいられるのは、それだけ期待感がある証左でもある。
「外野手全員にゴールデン・グラブ賞を獲ってもらいたい気持ちはある。やっぱり、タイトルは自信になりますからね」
最強外野陣を形成するためには、これくらいの目標は当たり前。守備のスペシャリストの理想は、どこまでも高い。