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武尊34歳“美しいラストマッチ”のウラで…敗者ロッタンの異変「ONEとのトラブル、張りのない身体…」不安と格闘した武尊とは対照的だった“心の緩み”
posted2026/05/02 11:35
悪夢にうなされ、不安と格闘しながらラストマッチで圧巻のパフォーマンスを見せた武尊。一方、敗れたロッタンには“異変”があった
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph by
ONE Championship Susumu Nagao
かつてこれほど濃密な余韻に浸れるラストファイトがあっただろうか。
4月29日、『ONE SAMURAI』で行われた武尊vs.ロッタン・ジットムアンノン(タイ)は戦前の下馬評を覆し、武尊が5ラウンド2分22秒、左フックでロッタンを沈め、有終の美を飾った。
圧倒的に“ロッタン有利”だった下馬評
その刹那、超満員に膨れ上がった有明アリーナの盛り上がりといったらなかった。大きなどよめきがひとつとなり、会場を包み込んだ。それほど武尊のKO勝ちの衝撃は大きかった。
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無理もない。武尊の引退試合としてロッタンとの再戦が組まれたとき、関係者、いや、武尊のファンでさえもロッタンの返り討ちを予想した。両者は昨年3月23日、日本開催の『ONE172』で初対決。わずか1ラウンド1分20秒、ロッタンの左フックで武尊は深々とマットに沈んだ。後日、盟友・野杁正明は決戦2週間前のスパーリング中に武尊が肋骨と胸骨を骨折し、全治7週間の診断が下されながらも試合を強行したことを明らかにした。
しかし、ケガというハンディを差し引いても負けは負け。今回の再戦でも「ロッタン有利」の下馬評が覆ることはなかった。ある海外サイトのオッズではロッタン勝利の1.28倍に対し、武尊の勝利は3.21倍と、じつに3倍近い差が開いていた。シビアに見るのであれば、絶望的なまでのBサイドだった。
武尊は2024年1月28日、ONEデビュー戦となったスーパーレック・キアトモー9(タイ)との世界フライ級タイトルマッチでも5ラウンド判定で敗れている。「倒すより壊す」というスタイルを具現化するように、ローキックによってスーパーレックの脚に深いダメージを与えたが、武尊自身も腿の筋断裂を負った。それほど世界の壁は厚かった。
武尊は「自分の弱さ」と向き合い続けた
ロッタンとの再戦を迎えるまでのONEにおける武尊の戦績は2勝(2KO)2敗。K-1で多くの強豪をなぎ倒し、連戦連勝で3階級制覇を成し遂げた頃と比べると、決して満足のいく結果を残していたとはいえない。ロッタンをKOしたあとの会見で、武尊は「ONEに参戦するようになってから、自分の弱さを改めて認識できるようになった」と口にした。
「ずっと勝ち続けていたときって、本当に自分が負けない、絶対に勝てると思ってやっていた。でもONEに来て『こんな弱いところがあるんだな』とか、いろいろ発見することができた」


