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【RIZIN】肥満体型のインドア少年→都内有数の進学校→なぜか芸人兼格闘家に “ブラックパンサー”ベイノアは意外性の宝庫
posted2021/11/08 17:00
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
RIZIN FF Susumu Nagao / Beynoah
格闘技イベントとしては実に15年ぶりに東京ドームで開催された6月13日の『RIZIN.28』で、観客の心を鷲掴みにした格闘家がいた。第1試合で弥益ドミネーター聡志と対戦した“ブラックパンサー”ベイノアだ。普段はキックボクサーとして活動するベイノアにとって、この日はMMAデビュー戦。対照的に弥益の方はDEEPの元チャンピオン。単純にキャリアを比較すれば圧倒的にベイノアの方が不利だったが、幼少の頃から稽古に励む極真空手で培ったガッツを武器に、父親は米国人で母親は日本人という男は1Rからスタンドの打撃戦で優位に立った。
続く2Rにはテイクダウンを奪われ未経験の寝技を味わうが、とどめを刺されるまでには至らない。逆に3Rには弥益のタックルを切り鉄槌を打ち込むなど反撃に転じた。結局2-1の判定で敗れたが、初陣としては出来すぎといってもいい内容だった。
先輩には坂本龍一はじめ各界の著名人がずらり
東京ドームの大会は世間への露出度も高いので、試合後は高校時代のクラスメイトから久しぶりに「RIZINチェックしているよ」という連絡が届いた。
「いつのまにか僕が大きな格闘技の大会に出ていたので、ビックリしたのかもしれない(笑)」
ちなみにベイノアが通っていた高校は東京都立新宿高校。偏差値は70近くという、いわゆる進学校である。1950年代には東大合格者数で都立日比谷高校と日本一の座を争い、大ヒット映画『君の名は。』で主人公が通う高校のモデルになるなど、名門として全国的に名前が知れ渡っている学校でもある。
先輩にはミュージシャンの坂本龍一や、合気道の世界では不世出の達人といわれる塩田剛三ら、そうそうたる面々が名を連ねる。ベイノアは格闘技を本業とする傍ら、お笑いコンビ『けとるべる』のボケとして活動するという別の顔を持っているが、そのほかにも実は頭脳派という一面を持っていたのである。
新宿高校に通っていたことを確認すると、ベイノアは頷きながら「頭は良かったみたいですね」と他人事のように呟いた。