格闘技PRESSBACK NUMBER
武尊34歳“美しいラストマッチ”のウラで…敗者ロッタンの異変「ONEとのトラブル、張りのない身体…」不安と格闘した武尊とは対照的だった“心の緩み”
text by

布施鋼治Koji Fuse
photograph byONE Championship Susumu Nagao
posted2026/05/02 11:35
悪夢にうなされ、不安と格闘しながらラストマッチで圧巻のパフォーマンスを見せた武尊。一方、敗れたロッタンには“異変”があった
かつて1試合数十万円というファイトマネーで生活していたロッタンにとっては桁外れの金額といえる。ここにONEでのサクセスストーリーがもたらす功罪が見え隠れするが、厚遇を受けながらなお自らを律するか、それとも胡座をかくかは全て本人次第だろう。残念ながら現在のロッタンは後者といわざるをえない。
セコンドに就いていた妻アイーダは、現役ムエタイファイターながらどこか場違いな、いかにも高級そうなコートを身にまとっていた。その姿を目の当たりにしたとき、「ロッタンは緩んでいるのではないか」という筆者の疑念は確信に変わった。
武尊が「稀有なアスリート」だといえる理由
ロッタン陣営の変化を見透かしたかのように、ONEのチャトリCEOは「彼は元世界チャンピオン。トレーニングによってハングリーさを取り戻すのであれば、再び世界のトップに立つことができるでしょう」と持ち上げつつ、鋭い指摘をすることも忘れなかった。
ADVERTISEMENT
「誰もが快適さに安住しすぎると、それが破滅を招くこともある」
こんな見方はできないだろうか。決戦を前に武尊が自分に打ち勝っていたのとは対照的に、ロッタンは自らの環境に溺れていたのではないか、と。公表されていないにせよ、武尊も他の選手が羨むようなファイトマネーを手にしているだろう。とはいえ、私財を投じる形でベトナムに小学校を建て、試合後のスピーチでも真っ先に今後の格闘技界への思いを口にしたように、我欲に生きるタイプではないのは確かだ。
武尊は危うさを感じさせるほどストイックな格闘家でもあった。今回もケガをしないギリギリのところまでトレーニングで自らを追い込んでいた。もしかしたら、試合前から勝負はついていたのかもしれない。武尊は引退試合でベストバウトというべきサプライズを見せるとともに、日本人ファイターとして初めてロッタンをKOしたキックボクサーになった。その姿に心を震わされたファンの熱狂が、美しいフィナーレに華を添えた。
生きざまによって、人々を感動させられるアスリートはなかなかいない。

