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34歳・武尊“ダウン4度のKO勝利”の真実「敗者ロッタンは控室で泣いていた」「ノーガードは無謀ではない」奇跡のラストマッチを生んだ“2つの要素”

posted2026/04/30 17:56

 
34歳・武尊“ダウン4度のKO勝利”の真実「敗者ロッタンは控室で泣いていた」「ノーガードは無謀ではない」奇跡のラストマッチを生んだ“2つの要素”<Number Web> photograph by ONE Championship Susumu Nagao

引退試合でロッタンから4度のダウンを奪い勝利した武尊

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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ONE Championship Susumu Nagao

 信じられないものを見た。

 4月29日に開催された『ONE SAMURAI 1』有明アリーナ大会のメインイベント。武尊vsロッタンの3分5ラウンド戦は5ラウンド2分22秒、武尊がTKO勝利を収めた。武尊はこれが引退試合だった。

 対戦相手のロッタンには、昨年3月に1ラウンドKO負けを喫している。武尊は現役最後の試合、その最後のラウンドのラスト1分を切ったところでリベンジ勝利をあげたのだ。

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 本当にそんなことがあり得るのかというレベルの、奇跡のような美しいラストマッチだった。だがこれは偶然の産物ではなかった。

武尊にとっての“限界”は「もう勝てない」ではなかった

 普通に考えて、スポーツ選手の引退は“限界”とイコールだ。肉体的、精神的に続けることができない。あるいは結果を残すことができない。能力が落ちた結果としての引退である。プロ野球の戦力外通告、格闘家でいえばここぞという試合での負け、再浮上できないほどの連敗。

 武尊はそうではなかった。昨年11月の試合で勝利すると次戦での引退を表明。その理由を「強いうちにやめたい」からだと語った。もちろんケガもあるのだが、武尊の引退における“限界”は、“もう勝てない”ではなく“これ以上は強くなれないところまでやった”という意味だと解釈できる。

 自分でやめるタイミングを決め、ファンに見守られて最後の試合を行う。レアケースとまでは言わないが、幸せなキャリアであることは間違いない。武尊の言葉で思い出したのが、魔裟斗の引退だ。2009年に現役を退いたK-1中量級の開拓者は「一番強い時に、もっと見たいと思われながら引退したい」と語っていた。最後の相手は、過去に2度敗れているアンディ・サワーだった。結果は判定勝ち。

 新生K-1で軽量級を世に広めた武尊は“リベンジ引退”でも魔裟斗に続いたことになる。魔裟斗がやったことだから自分もやらなければという思いもあったようだ。それが“ジャンルの顔”としての矜持だった。ただダウンを4度奪ってのフィニッシュは魔裟斗以上だった。

【次ページ】 取材者が感じた“ファイターとしての純度”

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#ロッタン・ジットムアンノン

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