濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
34歳・武尊“ダウン4度のKO勝利”の真実「敗者ロッタンは控室で泣いていた」「ノーガードは無謀ではない」奇跡のラストマッチを生んだ“2つの要素”
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byONE Championship Susumu Nagao
posted2026/04/30 17:56
引退試合でロッタンから4度のダウンを奪い勝利した武尊
取材者が感じた“ファイターとしての純度”
試合に向けての会見など公式行事を取材しながら感じたのは、武尊がファイターとしての“純度”を保ち続けている、あるいは高めているということだ。
2022年の『THE MATCH』で那須川天心に敗れた武尊が、新たなモチベーションとした対戦相手がONEのロッタンだった。K-1での自分と同じくムエタイ最強の“倒し屋”。キックボクシング時代の那須川を最も苦しめた(5ラウンド+延長1ラウンド判定負け)相手でもある。
ロッタンとなら最高の打ち合いができる。“那須川が判定勝ちにとどまった相手をKOする”という野望もあった。それで自分が那須川より上だということにはならない。それでも自分の中で何かしらの納得を得られるのではないかと。
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しかし再戦が決まった時、武尊はそうした過去の流れよりも、純粋にロッタンに勝ちたいのだと言った。1戦目は武尊にとって初めての“倒されて”のKO負け。それまでは判定もしくは負傷ストップでの黒星しかなかった。
あの時の悔しさを晴らしたい。ロッタンに勝ちたい。そんな思いとともにベルトへのこだわりも見せていた。この試合にはONEフライ級キックボクシングの暫定王座がかけられていた。世界中からトップ選手が集まってくるONEのベルトを巻けば「最強の証」になる。
試合後に武尊が語った「最大の勝因」
最後だから勝っても負けても悔いなく――そんなマインドではなかった。最後まで現役選手として、勝つために闘おうとしていた。“最後の闘い”を意識するとしたら「次を考えなくていいからケガをしても構わない。体の全組織、筋繊維の一本まで使い切って勝つ」という意味だった。
試合後の会見で、最大の勝因は何だったかと聞かれた武尊は「ONEに来て自分の弱さを認識できたことです」と答えている。
「勝ち続けていた時は“負けない、絶対に勝てる”と思ってやってたんですけど、ONEでは“自分にはこんな弱いところがあるのか”とかいろいろ発見できて。この最後の試合ではそれこそ体もどんどん壊れていったり、そういう弱さを認識した上で自分の闘い、体作りがハマりました」
試合前には、以前とは練習に違いがあることも明かしていた。身上である強気の打ち合いは、異常とも言える練習量がもたらす自信に裏打ちされていた。それは不安の裏返しでもあったはずだ。肉体も精神も追い込みすぎて、練習でケガをすることもあった。しかし、前回の試合(KO勝ち)から「コンディション重視」に。言い換えるなら“もう若くない自分”と向き合ったのだ。


