モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
まさかこんな場所にGPライダーが…菅生、筑波でレコード樹立、来季ヤマハ移籍が濃厚となった小椋藍の成長を支える神出鬼没の国内トレーニング
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2026/04/29 17:00
スポーツランドSUGOでトレーニングする小椋
さまざまな決断を迫られるなか、藍はいつも通りトレーニングに励んでいた。今年は練習環境が整っている日本をベースにグランプリ開催地に赴くことにしており、その成果を問えば藍はきっぱりと「あります」と答える。練習は父・正治さんとの二人三脚。早朝起きてサーキット近くの釣り場を探してバス釣り。練習を終えて、再びバス釣り。大好きな釣りとバイクトレーニングで充実の日々を過ごしていた。
トレーニングする藍の走行写真を撮り、走行の合間に話を聞いた。今年の好走の要因について藍はこう語った。
「バイクが良くなったのと人間の慣れですね。この2つは切り離して考えられないです。バイク的にはブレーキングと、バンクしているところからアクセルを開けていけるところの2つのポイントがタイム向上につながっている。人間の慣れという点では自信がついたこともありますね。自信がないと速く走れないですから」
ADVERTISEMENT
その一方で、依然として抱えるウイークポイントもある。それは気温が低いコンディションとウエットが苦手なこと。アメリカズGPでは気温と路面温度の低下で、スペインGPでは雨上がりの不安定な路面コンディションで、ともに予選11位に沈んだ。藍の慎重な性格とリスクを負わない走りは、難しいコンディションでポジションを落としがちだ。それが結果として、あと一歩表彰台に届かない要因になっているが、後半の素晴らしい追い上げは「グリッドさえ良ければ」と思わせて、多くのファンのハートを掴む。
表彰台はすぐそこに
藍はこれまで2年目のシーズンに大きな成長を見せてきた。Moto3時代は1年目総合10位から2年目はチャンピオン争いに加わっての総合3位。Moto2の1年目は総合8位だったが、2年目はやはりチャンピオン争いを繰り広げて総合2位につけた。3年目はケガのために総合9位にダウンしたが、4年目には見事チャンピオンを獲得した。
MotoGPクラスは歴戦の王者が揃うクラスだけにMoto3やMoto2のようにはいかないが、藍は着実に成長を遂げ、今季は大きな飛躍を感じさせている。
予選11番手から素晴らしい追い上げで5位フィニッシュしたスペインGPは、藍の初表彰台、初優勝がすぐそこにあることを感じさせるレースだった。シーズンを終えたときに果たして藍はどこまで成長しているのだろうかと思わせてくれた。「今年の目標は8位以内。まだ、チャンピオンを狙う器じゃない」と控えめに目標を語る藍だが、スペインGP終了後の公式テストは初のトップタイムで締めくくった。その成長ぶりには日本人初のMotoGPチャンピオンの可能性を感じる。
来季、藍の移籍先として候補に挙がるチームはヤマハファクトリー以外ない。藍はまだ多くを語らないが、もはや発表を待つばかりの状況である。

