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まさかこんな場所にGPライダーが…菅生、筑波でレコード樹立、来季ヤマハ移籍が濃厚となった小椋藍の成長を支える神出鬼没の国内トレーニング
posted2026/04/29 17:00
スポーツランドSUGOでトレーニングする小椋
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
MotoGPクラスで2年目のシーズンを迎える小椋藍の進化が止まらない。その評価は高まるばかりで、今シーズン開幕と同時に始まった来季以降の移籍市場では、もっとも注目を集めるひとりになっている。
移籍市場で日本人選手が中心的存在になることは、1990年代から2000年代に掛けては珍しいことではなかった。阿部典史、加藤大治郎、中野真矢、芳賀紀行などなど、他にもたくさんいる。しかし、93年にヤマハで250ccチャンピオンに輝き、その後アプリリア、ホンダへと移籍していった原田哲也のように、メーカーを越えての移籍劇が話題になったのは久しぶりだ。
最近のMotoGPクラスは2年契約が主流で、今季はほとんどの選手が満期を迎えるため移籍市場は開幕前から活発だった。水面下で行われる契約更改、そして移籍交渉は秘密事項が多く、情報が漏れてくることは少ないものだが、最近の移籍に関するニュースはあっという間にパドックに広がる。藍が所属するトラックハウスからヤマハファクトリーに移籍するというニュースもまた、大きな話題となってレース界を駆け巡った。
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当然、日本のレースファンの関心も高かった。しかも、藍が初表彰台にあと一歩の快走を見せた第3戦アメリカズGPを終えた後だったこと、さらに今回は移籍が既成事実として報じられたことも騒動に拍車をかけることにつながった。
噂が既成事実になった日
そして迎えた第4戦スペインGPの木曜日には、ヤマハファクトリーに所属するアレックス・リンスが、チームディレクターから「いまはまだ言わないでほしいが、2人目のライダーと契約した」と言われた(事実上、今季を最後に契約を終了することを通告された)ことを明らかにした。さらに藍の所属するトラックハウスのダビデ・ブリビオが、報道陣の質問に対して「藍は来年、我々と継続しないと伝えてきた。どこへ行くかについては私が話すことではありません」と答えた。これにより、藍を取り巻く状況が一段とクローズアップされることになった。
金曜日のメディアスクラムでは、ブリビオが語った内容について藍に質問が飛んだ。それに対して藍は、「僕から言うことはなにもありません。来年、僕がトラックハウスに残らないとダビデが言ったのなら、そういうことになります」と答え、チームを離れる決断についてどうだったのか? という質問には「簡単ではありませんでした」と手短に答えるにとどまったが、3人の言葉がヤマハ移籍のニュースを後押しする形になった。
アメリカズGPから帰国して2週間、藍は栃木県のモビリティリゾートもてぎ、茨城県の筑波サーキット、栃木県の日光サーキット、そして地元埼玉県の桶川スポーツランドの4つのコースでロードバイクに乗ってトレーニングに励んだ。さらにスペインGPに出発する前の1週間は、埼玉県のオフロードヴィレッジ、筑波サーキット、スポーツランドSUGO、福島県のエビスサーキットに遠征して走り込んだ。そのうちの数日間、僕は藍のトレーニングに密着した。

