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「あの走りは…自分には無理」早大“山の名探偵”が明かす「黒田朝日の衝撃」…実は絶不調だった箱根駅伝秘話「とんでもなく遅いタイムかと」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2026/04/28 06:00
年始の箱根駅伝で早大の5区を担った工藤慎作。“山の名探偵”が振り返る箱根路までの紆余曲折とは?
ただし、抵抗する意志は持っていた。工藤は下りが得意ということもあり、下りになったらギアを切り替え、抜かれたとしても復路のためにダメージを最小限にとどめようとした。
しかし、黒田の勢いはとどまるところを知らず、徹底抗戦することはかなわなかった。フィニッシュ地点では18秒の差がついていた。
「実は、自分はとんでもなく遅いタイムで走っているんじゃないかと思っていました。それこそ72分とか、それくらいじゃないかというくらいの感覚で。でも、実際には69分46秒で走れていて、意外と収まるところに収まったのかな、とは思いました。秋までの練習の積み重ねで地力がついた成果だと思います」
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ただし、黒田は67分16秒で走破していた。悔しい経験だ。工藤から黒田の背中はどう見えていたのか。
黒田の走りは「ちょっと考えられない」
「このところ箱根駅伝の記録はインフレ傾向が続いていると考えていました。これまでの5区の区間記録は前々回、若林宏樹さん(青学大、当時)が出した1時間09分11秒で、68分台を出したら十分に『山の神』と呼ばれる資格があると思うんです。でも、黒田さんの67分台というのはちょっと考えられないです。
実際に黒田さんと並走したのはわずかな時間でしたし、テレビで確認しただけですが、黒田さんの上り適性は想像を超えていました。自分に同じような走りができる実現可能性があるかと聞かれたら、自分には無理かと思います。区間距離が短くなった5区で、柏原竜二さん(東洋大、当時)のような『山の神』が登場したのは、本当に考えられないことです」
走り終えて、「だいぶ疲れたな」というのが工藤の実感だった。
しかし、立ち止まるわけにはいかない。大学の後期試験があり、そしてターゲットを3月1日に行われる東京マラソンに定めた。
<次回へつづく>

