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「あの走りは…自分には無理」早大“山の名探偵”が明かす「黒田朝日の衝撃」…実は絶不調だった箱根駅伝秘話「とんでもなく遅いタイムかと」
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生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2026/04/28 06:00
年始の箱根駅伝で早大の5区を担った工藤慎作。“山の名探偵”が振り返る箱根路までの紆余曲折とは?
往路、早稲田はレースを盛り上げた。
4区で1年生の鈴木が区間新に迫る快走を見せ、首位の中央大学に1分12秒差の2位で工藤はタスキを受けた。
「予想よりいい順位でした。3区の山口竣平が故障明け、4区の鈴木もハーフマラソンの距離は初めてだったので、不確定要素が多く、タイム差もついての5位とか、6位とか、そんな形で来る可能性も考えていました。それが2位だったので、往路優勝することを考えると、思っていたより前の位置で持ってきてくれたのはありがたかったですね」
地力はついていたが…「山は誤魔化しがきかない」
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そして工藤は中大の背中を追う。
3.5km地点の函嶺洞門で、工藤のタイムは10分27秒で途中計時はトップ。レース直後、花田監督は「中大との差が1分以上あったので、工藤も突っ込んだのかなと思います」と話していたが、工藤の感覚は少し違った。
「突っ込んでいる雰囲気が出ていたかも知れませんが、そんなことはなかったです。この1年間である程度の力がついて、調子が上がっていないにしても、平地だったらあれくらいの走りは出来たということです。ただ、上りになってからは話が違いました。本当に誤魔化しがきかないというか、足にダメージが来ているのは感じていました」
10km手前。工藤はついに中大を捉えて先頭に立ち、早稲田の往路優勝の可能性が高まった。ただしその時点で、工藤の下半身にはかなりのダメージが来ていた。
そして、青山学院大学の黒田朝日がやってきた。
「監督からの声掛けポイントで、黒田さんがものすごい勢いで迫ってきているのは知っていました。7km地点の大平台で2分ほど差があったのが、11.7kmの小涌園前では1分差になり、最高点の芦之湯では15秒にまで縮められていました。この時点で自分の足は止まっていましたし、『抜かれるのは確定。負けるのは仕方ない』と覚悟を決めていました」

