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「クレイジー!」スノボ採点は誤審だったのか? ミラノ五輪日本人審判が今明かす村瀬心椛“3位どまり”の真実「村瀬選手はあと2m乗れていれば…」
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNanae Suzuki/JMPA
posted2026/04/22 11:05
「北京の平野歩夢のジャッジ以来」とまで言われた採点の真相とは? シーズンが終わり、五輪でジャッジを担当した日本人審判が語った
ここで重要になるのがスロープスタイルの採点方式である「セクション・バイ・セクション」の仕組みだ(※ハーフパイプは全体を総合的に採点するオーバーオール方式)。
セクションジャッジは2人1組で3組に分かれ、各組が2セクションずつジャッジする(橋本氏は女子スロープスタイルで第5&6セクションを担当)。各セクションのジャッジの平均点を合算してスコアが算出される。そして、それ以外に全体の構成を評価するコンポジションジャッジが3人いる。
この採点システムにより、「1つの技だけを見れば81点と89点くらいの差があっても、8.1~8.9点に収まってしまう」(橋本氏)ため、この“見かけ上の差の小ささ”が、外部からの誤解を生む一因になる。特に観客には最後のジャンプの印象が強く残るため、序盤のレールのミスが過小評価されがちでもある。
実は明確に決まっている採点基準
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では、スノーボードの採点基準はどのように決められているのか。実はそこには明確なプロセスが存在している。
ジャッジ陣は大会毎に公式練習前後から詳細なミーティングを重ね、「トリック・ツリー」と呼ばれる基準表(写真)を作り上げる。どの技がどの採点レンジに入るのか、個性のある特殊なトリックをどう評価するのかを細かく議論し、さらにチームキャプテンミーティング(TCミーティング)で各国コーチとも意見を交わす。
「この技はこの点数、と明言するわけではないが、だいたいのレンジは選手側とも共有しています」。橋本氏はそう語る。例えば、意図的に回転を抑える高度なコントロール技術などは、通常の回転数以上に評価される場合もある。こうした微細な判断基準は、ジャッジとコーチの継続的な対話の中で形作られていく。
さらに重要なのは、このプロセスが一過性のものではないという点だ。4年周期どころか、10年近い時間をかけて現在のシステムは構築されてきた。2014年のソチ五輪でスロープスタイルが初めて正式種目に採用された時は、ハーフパイプと同様のオーバーオール方式だったが、そこからセクション方式へ移行する際も、選手・コーチとの合意があった。

