- #1
- #2
オリンピックPRESSBACK NUMBER
「クレイジー!」スノボ採点は誤審だったのか? ミラノ五輪日本人審判が今明かす村瀬心椛“3位どまり”の真実「村瀬選手はあと2m乗れていれば…」
text by

矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byNanae Suzuki/JMPA
posted2026/04/22 11:05
「北京の平野歩夢のジャッジ以来」とまで言われた採点の真相とは? シーズンが終わり、五輪でジャッジを担当した日本人審判が語った
象徴的なのが、3本目のランの最終第6セクションに入れたフロントサイド720だ。“セブン”という回転数だけなら標準的な技に映るが、深田はここで「オフ・ザ・トー」という難度の高い踏み切りを選択している。通常、フロントサイドはヒールエッジで抜けるのに対し、つま先側(トー)で抜けるこの技術は、リップに引っかかれば大きなクラッシュにつながるリスクを伴う。深田のこのトリックは女子ではほとんど前例のないチャレンジであり、ミラノ・コルティナ五輪で実施したのはただ1人だった。
「同じセブンでも難しさはまったく違います。深田選手の最後のトリックには回転数以上の価値があるのです」
橋本氏はそう説明する。さらに、競技全体を通じての評価である「コンポジション(構成)」の観点でも、深田は高得点を得ていた。回転方向のバリエーション、グラブの違い、技の軸、そして完成度。加えて“ネバー・ビーン・ダン(NBD=これまで誰もやっていないこと)”への挑戦も評価の重要な要素となる。深田の滑りは、そうした複合的な価値を高いレベルで満たしていた。
評価を分けた「序盤」
ADVERTISEMENT
一方で、深田と村瀬の評価を分けたのはジャンプではなく、むしろ序盤のレールセクションだった。特に第1セクションのレールで村瀬が「早く落ちている」ことである。採点結果を見ると村瀬の最初のレールは、自身の他のセクションと比べても、1位の深田や2位になったゾイ・サドフスキシノット(ニュージーランド)と比べても明らかに点数が低く、「レールの半分程度しか滑れていない」という評価に近いものだったという。結果的に第1セクションでのミスが全体の順位を左右する決定的な減点を招いた。
「村瀬選手はあと2メートル長くレールに乗れていたら、優勝していた可能性が高い」。橋本氏はそのように推察している。実際、他のセクションでは高得点を記録しており、その完成度は金メダルに値するレベルだった。


