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戸郷翔征二軍調整と宮城大弥ヒジ故障で気になる“甲子園もプロも”先発の球数増加…メジャーは大谷翔平も山本由伸も今永昇太も“100球メドで降板”
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki,JIJI PRESS
posted2026/04/15 11:00
二軍調整が続く戸郷翔征と左ひじ側副靭帯損傷が判明した宮城大弥。日米の先発投手の球数を比較すると、考え方の違いが見えてくる
カブスの今永昇太は4月10日のパイレーツ戦で1四球を出しただけで1本の安打も打たれなかったが、球数が100球ちょうどに達した6回で降板した。
一方で3月31日、日本ハムの細野晴希がロッテ戦で史上91人目のノーヒットノーランを達成したが球数は128球だった。MLBであれば、彼の球数が100球に達した8回で躊躇なく降板させたと推測される。
選手の大型契約が当たり前になったMLBでは、「投手の肩肘は球団の資産」という考えが定着している。
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ドジャースであれば、投手としては手術後初のフルシーズンに臨んでいる大谷翔平はもちろん、完投能力がある山本由伸もレギュラーシーズン序盤戦は100球前後をメドに降板している。また14日のメッツ戦で先発したロブレスキーは8回90球無失点の好投を見せたが、9回のマウンドはスコットに譲った。
目の前の勝利や個人の大記録のために、投手をリスクにさらすことはありえない、という認識である。
「良い救援投手が育たない」というデメリットも
先発投手により多くの球数を投げさせることのデメリットは、先発投手の故障のリスクを高めるだけではない。「良い救援投手が育たない」というデメリットも生まれる。
NPBにも優秀なクローザー、セットアッパーは多くいるものの、その層はMLBに比べても分厚くはない。WBCで日本はパドレスの松井裕樹に加えて石井大智(阪神)、平良海馬(西武)と一線級の救援投手が出場辞退し、先発投手を「第2先発や救援」にまわしてやりくりをすることになった。
先発と救援では、調整や力の配分が異なる。速球をどんどん投げ込み、打者を圧倒する救援投手のような投法は、先発投手は難しい。WBC準決勝で、昨年の沢村賞投手(=最も優秀な先発投手)の日本ハム伊藤大海が救援に出て決勝のホームランを打たれたのは、その象徴と言えるシーンだった。
日本は「できることなら先発転向」と考える救援投手が多い。今季でいえば広島の栗林良吏、西武の平良らが先発に転向したが、先発偏重が、救援のステイタスを下げているという一面もあろう。
肩肘のリスクを考えれば球数制限は必然となるが
投手の肩肘のリスクを考えれば「球数制限」は必然となる。高校野球でいえば「150球」を投げることは、次のステージに進むうえで経験値を高めることにはならない。またNPBの先発投手も個人差はあるにせよ、100球を大きく超えることが常態化するのは問題だろう。
プロ、高校野球ともに優秀な投手とは「最後まで投げまくる」投手ではなく、任されたイニングを球数少なく、失点少なく投げ切る投手だということになるのではないか。

