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「テンシンは自信を失っているのではないか」那須川天心が英国人記者の予想を裏切る“キャリア最高の出来”…井上拓真に完敗から4カ月半、何が変わった? 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Finito Yamaguchi

posted2026/04/13 11:01

「テンシンは自信を失っているのではないか」那須川天心が英国人記者の予想を裏切る“キャリア最高の出来”…井上拓真に完敗から4カ月半、何が変わった?<Number Web> photograph by Hiroaki Finito Yamaguchi

メキシコの英雄・エストラーダをTKOで下した那須川天心(27歳)。再び“世界の挑戦権”を得た

 今戦に関してはエストラーダの衰えを指摘するより、しっかりと仕事を果たしたテンシンを誉めるべきだろう。たとえピークは過ぎようと、多くの強者と常に互角以上に戦ってきた本物の“メキシコのレジェンド”を相手にあの戦いをやってのけたのだから。

 昨年11月の初の世界タイトル戦は、フィジカル面で優れ、全盛期を迎えたタクマに差を見せつけられた。ダメージの蓄積も少なく、動きや適応力、調整力の面で当時のテンシンよりタクマのほうが多面的だった。序盤はテンシンが好スタートを切ったが、タクマが修正すると、対応できず主導権を取り返せなかった。

 あれから4カ月半――正直、今回のエストラーダ戦でのテンシンのパフォーマンスのレベルには少々驚かされた。本当に見事なパフォーマンスをみせてくれた。非常にバランスの取れた内容で、おそらくキャリア最高の出来だっただろう。手痛い初黒星からの復帰戦であることを考慮すれば余計に称賛されてしかるべきだと思う。

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 テンシンのプロボクサーとしてのキャリアの密度は、タクマ、そしてエストラーダと戦ったこの2試合に集約される。2025年2月に対戦して判定勝ちを飾ったジェイソン・マロニー(豪州)も良い選手だが、それでもやはりこの2戦の方が重要で、それ以前とははっきりと質が違う。一級のボクサーとして成長することで、プロスペクト(有望株)からコンテンダー(世界チャンピオン候補)へ移行する過程がはっきりと見えた。そのプロセスで多くを学び、合間には質の高いスパーリングも積んだはずだ。こうして新たな階段を上ると同時に、まだ成長途上であるように思えることは、テンシンのチーム、ファンにとって頼もしく、楽しみな要素だといえよう。

井上拓真とのリターンマッチ

 今後のテンシンを考えた時、今回のようなパフォーマンスを世界バンタム級のトップボクサーたちを相手にできるかどうかが焦点になる。WBA王者セイヤ・ツツミ(堤聖也/角海老宝石)、WBO王者クリスチャン・“チスパ”・メディナ(メキシコ)、そしてタクマといった王者たちに勝てるか、世界王者になれるかどうか。

 この階級の戦線を考える上で、5月2日の東京ドーム興行で行われるタクマとカズト・イオカ(井岡一翔/志成)のタイトル戦も重要な一戦になる。当然のようにメインイベントに注目が集中しているが、この試合も大変な好カードだ。エストラーダ同様、37歳になったイオカの現時点での力が図りかねるという背景ゆえに、予想が難しいカードでもある。バンタム級への適性、タクマの前戦での出来の良さを考慮し、私は僅差でタクマが優位としておきたい。当然イオカにも勝機はあるが、現状ではタクマの方により多くの余力があるように思えるからだ。

 エストラーダとのWBC世界挑戦者決定戦に勝ったテンシンは、タクマとイオカの勝者への挑戦権を手にしたことになる。とはいえ、タクマが勝ち上がってくるとして、私は早い段階でのリターンマッチ挙行は勧めない。勝つために必要な変化をまだ積み上げておらず、現時点ではまた難しい戦いになると思えるからだ。 

 もちろん、現実的には挑戦権を得た関係で近未来のリマッチが筋ではある。この短期間での成長度で上回り、唯一の敗戦を雪辱し世界王座を取れば、それは驚異的なストーリーになる。しかし、そのためには多くの課題がある。

【次ページ】 「新トレーナーを迎えても大きく変えられるか疑問」

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