将棋PRESSBACK NUMBER
「有力な形が10に近いくらいある」“藤井将棋の恐ろしさ”を永瀬拓矢に聞いたのち…各対局場への“感謝”に思い出す谷川浩司とのやり取り
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph byShintaro Okawa
posted2026/03/25 11:03
3勝3敗のタイに戻した藤井聡太王将
「本譜の順をやられたらきついんだろうなと思ったんですよ。ただ8八に歩を打つと、こう進むのは仕方がありません。8八に歩を打つ手を一番活かしたのが、竜と馬を作り合う本譜の展開です。実戦はこちらが2四に歩を打った手に対して、先手は飛車を1五の香を取ってから竜を作ったんですけど、▲2九飛なら一応穏やかな展開になるんです。本譜の方が嫌だなと思いましたけど、そう指されたのでこちらがベストを尽くすしかない状況になりました」
永瀬の言うように、先手が竜を作った61手目の局面は先手の期待勝率が61%と先手有利を示していた。とはいえすぐに勝負が決まるような局面ではない。だがここから9手先、急にAIの評価値の差が開いてしまうのだ。
「藤井さんが気にしていた手」とは
70手目に後手が5筋の歩を天王山に突くと、先手の期待勝率が79%に急上昇した。先手は4五に桂を打ってから3三の銀を奪う。それから5五の天王山に角を出て王手をした。後手は5三の銀を角に当てて王手を受けたのだが、先手が4六の歩を香で取った手が決め手になった。詰めろになっているし、銀で5五の角を取っても後手玉は詰んでしまう。ここで勝負は決したといってもいい。
ADVERTISEMENT
AIは天王山に歩を突いた手に代えて、△4六歩と打って香車の利きを遮断する手を示す。これでも後手が悪いが、本譜よりは粘りが利くということか。永瀬の言うように戦型によっては序盤の指摘は微妙なこともあるようだが、終盤が近くなるほどAIは正確性を増す。解が絞れてくるからだろう。
永瀬はこの代案をどう見ているのか。
「藤井さんはその手(△4六歩)を気にしていたと感想戦でおっしゃっていました。私も第一感で読んでみたのですが、ちょっと厳しいかなと。5五に歩を突いたほうが将来、中段玉になった時に粘りやすいと思ったんですよね。あと本譜は4五に桂を打たれましたけど、どれだけダメなのかよくわかっていなかったんです。4六に香車を走られると確かにダメなことは、その少し前でわかったんですけどね」
形勢が悪いと結局は相手のミス待ちなんです
一度も形勢がよくなることがなかった本局で、永瀬は力を出し切れたのか。するとこの香を走る局面について触れた。

