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「有力な形が10に近いくらいある」“藤井将棋の恐ろしさ”を永瀬拓矢に聞いたのち…各対局場への“感謝”に思い出す谷川浩司とのやり取り
posted2026/03/25 11:03
3勝3敗のタイに戻した藤井聡太王将
text by

大川慎太郎Shintaro Okawa
photograph by
Shintaro Okawa
10に近いくらいあるので…どれを選ばれるか
王将戦第6局が決着した夜、敗れた永瀬への電話取材は序盤戦の話が長くなった。本局の急所はそこにあったからである。
「この将棋は先手に有力な手段が多いんです。本局の形が最有力ならこれを中心に調べればいいんですけど、有力な形が他にも何個かあるんですよ。だから藤井さんがどれを選ぶのか興味はありましたね」
だから永瀬は第2回の記事の最後のほうで、「後手側が網羅しなければいけない変化がかなり多い」と話していたのだ。先手に有力な分岐はいくつくらいあるのだろう。
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「10はいかないですけど、それに近いくらいあるので、どれを選ばれるかわかりませんでした。まあ本譜の進行だと一応、折り合う展開なので最有力の中の一つではあるんですけど、飛び抜けてこれかなと予想できる順はなかったです」
その分岐を全部、突き詰めていくのだ。AIによる序盤研究とはそういうもので、想像するだけで途方に暮れる。研究に膨大な時間とエネルギーを費やしている永瀬でさえ、本局の形は調べ切れていなかった、もしくは記憶し切れていなかったことになる。
指しかけの時点で、形勢をどう思っていたのだろうか。
「初日が終わった段階で、体感としては350点から500点くらいは悪いかもしれないという気がしました。封じ手直前の8八に歩を打った手以外にも、△7七歩▲同桂△7六歩とか複数、有力な手があったので選んでしまったんですけど、ちょっと問題がありましたね」
本譜の順をやられたらきついんだろうな、と
2日目に入って、先手が竜、後手は馬を作る展開に進んだ。その辺りはどう見ていたのだろうか。

