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「チームに勢いをもたらす選手」カープ新井監督も認めるドラ1ルーキー平川蓮の“切り込み役”の適性と開幕スタメンの可能性
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前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2026/03/02 17:00
守備練習で打球を追う平川。キャンプからオープン戦にかけ非凡な能力を披露している
当然、左右それぞれに好不調の波はある。投手の持ち球や特徴によって、右投手にも右打席、左投手にも左打席に立つ感性の持ち主。なぜか、後から磨いてきた左打席よりも、右打席の感覚の方が悪くなることが多い。大学時代には左打ちに専念するよう提案されそうになったことも何度かあったが、そのたびに結果で示してきた。
「(左専念の)空気を感じたときは、必ず次の試合で右でホームランを打って打ち消しました」
プロでのホームランも、それまで結果が出ていなかった左打席で放ったことに価値がある。上体が開く悪癖を試合前の打撃練習で意識的に修正したことで、周囲の不安をひと振りで振り払った。
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スイッチヒッターには強いこだわりを持つ。目標とする米大リーグ・レッズのエリー・デラクルーズのように、小さくまとまるのではなく、走攻守ともにパワーを兼ね備えた選手を思い描いている。
「右はパワフルにフルスイング、左はシャープにフルスイングを意識しています」
対外試合初戦から常に1番を任され、ファーストストライクから積極的に振りに行く攻撃的スタイルを貫いている。独特なキャラクターから、周囲に「宇宙人」と呼ばれる。対外試合デビュー戦では「野球って楽しいな」と笑顔で振り返る奔放さも感じられる。ただ、決して利己的なタイプというわけではない。初戦が始まる前に、自ら新井監督に方針を確認していた。
「チームによって、1番打者は球数を投げさせるという役割もある。新井監督に聞いたら『そんなの別にいいよ』と言われたので、初球から行くようにしました」
「嫌なバッター」の資質
キャンプ前には、合同自主トレで一緒になった大瀬良大地にも「どんなバッターが嫌ですか?」と直撃していた。プロで10年以上戦い、6458人の打者と勝負してきた右腕の答えは明快だった。
「初球から振ってくるバッターは、やっぱり嫌だよ」
だからこそ、初球から迷わずに振り抜ける。沖縄での一発も、ファーストストライクを捉えたものだった。本能や感覚だけではない。準備や裏付けがちゃんとある。
春季キャンプ中の対外試合での打順に深い意味はないことを強調していた新井監督も、平川の切り込み隊長としての資質を感じている。
「もちろん結果を出していることもあるけど、チームに勢いをもたらしてくれる、そういう華やかさもある選手だと思います」
新人の開幕1番も現実味を帯びてきた。この先、一線級の投手の球威や変化球の切れ、外国人打者の打球速度を体感し、壁にぶつかる日がきっと来る。それでも、あの背走のように迷わず走り続ければ、開幕のチーム初打席もきっとつかめるはずだ。

