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「じつは大谷翔平はフリー打撃をする必要がなかった」記者が目撃した“あえてファンに練習を見せる”大谷の狙い「中日井上一樹監督も夢中になった20分間」
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佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS
posted2026/03/01 11:04
2月27日、中日との壮行試合を前にフリーバッティングに臨む大谷翔平(31歳)
大谷らメジャー組は、MLBの規定で中日との壮行試合2試合は出場することができない。練習や試合前のセレモニーに参加することは問題ないのだが、フリーバッティングで“顔見せ”する必要はなく、あくまで本人がファンの前に姿を現したいという心ひとつ、というのが実情だ。
そもそも大谷は、所属するドジャースではバッティング練習は室内で行っている。キャンプから公式戦を通じてグラウンドでフリーバッティングが見られることはほぼないことを考えると、打撃の調整という目的からすれば大谷にとっては必要のない動きである。しかし、代表に合流した前日26日にはすでに、井端監督をはじめとした関係者にはフリー打撃を行う可能性が伝えられ、この日はキャッチボールの後にベンチ裏の室内で打撃練習を一通り行ってからグラウンドに姿を現していた。大谷にとって、このフリーバッティングは集まった多くの野球ファンへのプレゼントなのだ。
フリーバッティングの間、大谷は終始楽しそうな表情で瞳を輝かせていた。出だしこそ軽くバットを振っていたが、すぐにスイッチが入り豪快なスイング音を響かせた。バッティングピッチャーを務めた日本代表の亀井善行・外野手守備走塁コーチには時折アイコンタクトを送り、打撃練習を終えるとにこやかに談笑。亀井コーチは「気持ちよく打ってもらうことしか考えてなかった。“緊急登板”ということで(コントロールについて)すみませんでした、と伝えたら褒めていただいたんで(笑)。22年間で一番緊張した仕事」と振り返った。
大谷「子どもたちが同じ思いを抱いてくれたら…」
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1週間を切ったWBC開幕に向け、二刀流を封印して挑む看板打者としての状態をしっかりと上げていることに間違いはない。目指すのはあくまで、3年前に見た頂点の景色をもう一度眺めること。しかし、大谷が多くの野球ファンに見せたいのはそれだけではない。豪快な打球の魅力、何より純粋な野球の楽しさ。日米のスーパースターである自覚と、“野球の伝道師”としての使命が大谷を突き動かす。
前回2023年の大会前、出場を決めた思いを大谷はこう語っている。
「僕自身が一番野球を楽しい時期に、そういうプレー、試合を見させてもらって、いつか自分がここでプレーできたら面白いだろうなと、一つの夢として思っていた。今度はこの大会で自分たちのプレー、戦う姿を見て、子どもたちがまた同じ思いを抱いてくれたらいいなと思う」
連覇を目指す今大会も、その想いは変わらない。ひたすら勝利を目指すその道の先に、伝えたいものがある。衝撃的な28スイングに込めたのは、野球への愛と大きな夢だ。


