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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「競技者として悔いなく死ねる」ノルディック複合・渡部暁斗がミラノで見せた“あきらめの美学”「いまはちゃんとアスリートです」第一人者の27年間
text by

雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byTsutomu Kishimoto/JMPA
posted2026/03/01 11:01
今季限りの引退を表明している37歳の渡部暁斗。自身6度目となる最後の五輪はメダルなしに終わったが、その心中は晴れやかだったという
23歳のときにW杯で初めて優勝したヴァルディフィエメの地に戻ってきて、6度目のオリンピックを最初と同じ順位で終わるのも一つのサイクル。
そして、循環の環は、最後に渡部に競技者としての厳しい舞台も用意していた。
コンバインド競技最終種目のチームスプリントは、前半のジャンプで3位。後半の距離はトップと21秒差でのスタートとなった。激しく雪が降る悪天候の中、日本はワックス選択がはまってスキーがよく滑り、後半までノルウェー、ドイツなど5チームで先頭集団を形成。緊張感のあるレースを展開した。
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終盤に山本涼太がドイツ選手の転倒に巻き込まれるアクシデントがあって遅れたものの、そこまでは渡部も「チャンスがあるかもと思いました。プレッシャーを感じながら、久しぶりにワクワクしたレースができてよかった」と晴れやかな表情で振り返った。
6度目の、そして最後の五輪。花は散り、月は欠けても、美しかった。
「競技者としてある意味、死を迎える瞬間。でも悔いなくこの世を去れます。本当にいい終わり方だなと。人生っていろいろあるじゃないですか。最後にこれから死にますという時に、『ああいい人生だな』と思えたらすごく幸せ。競技者としての人生はそうやって終われたので、この先の人生でもそう思えるように生きていきたいです」
残すはW杯2試合…「ちょっとしたご褒美」
最後は日本チームの関係者に胴上げしてもらい、華々しく散った。だが、実はもう少しだけ余生がある。
今季歴代最多出場記録を更新、通算出場300試合に達したW杯が2試合残っている。
「ちょっとしたご褒美みたいなものですよね。300試合全力でやってきたんで、最後の2試合だけちょっと楽しませてもらいたいです」
3月中旬のオスロ大会。ノルディックスキーの聖地で、渡部暁斗は本当の最後を迎える。

